スタレ

特殊設定現パロアルジェンヒル続き


 それからの日々は、思っていたよりも遥かに穏やかだった。
 龍神は時折姿を消しては酒だの何だのを持って帰ってきて食には一向に困らず、まあ、強いて言うなら暇すぎて気が狂いそうになったくらいか。
 そうして居間の床で暴れていたらかわいそうに思ったのか、龍神が農具を持ってきて暇潰しがてら畑をやることになった。これが意外と奥深く、試行錯誤して育てたトウモロコシのまあ旨いこと。次はあれもこれもなんてやっているうちに、この生活も気付けば半年が経過していた。
 この半年間で龍神はオレに飽きるだろうなんて思っていたがそんなことはなく、未だ同じ布団で寝るのを強要されているレベルである。まったく、若い娘ならまだしもこんなおっさんの何処が良いのやらだ。
 でも、そう聞いても龍神は「貴方が良い」としか言わないだろうから、まあ受け入れるしかなちのだけれども。
「貴方が欲しがっていた釣具、近々届くそうなので取りに行ってきますね」
「あれ、本気にしてたのか」
 屋敷の近くには川が流れていて、どういうわけか魚が泳いでいたのを見て、何時だったか釣りがしたいなんて言ったこともあったが、まさか覚えていたとは。嬉しさと、少しの申し訳なさに困惑していると顔を覗かれて「大丈夫ですか?」なんて問われたもんだから、慌てて「嬉しいよ」と言えば龍神は笑顔になった。
「今度、天気の良い日にでもやってみましょう。僕は釣りをしたことがないので教えてください」
「いいぜ?これでも昔は趣味で川に釣りにいってたんだ」
 本当に、こんな穏やかに暮らしていて良いのだろうか。そう思うが、与えられた物を受けとることしか出来ない以上、悩んでもしょうがないのだろうなとうっすら思った。
 そんなある日のことである。
「何やら外が騒がしいですね」
「外?何にも聞こえねぇけど」
 食後にのんびり椅子に腰掛けていると、龍神が言った。
 だからと言って、オレには何も聞こえない。不思議に思っていると、アイツが立ち上がって、通路奥の暖簾の向こうへと消えていった。
「ああ、社の方か」
 この屋敷の構造は不思議で、オレが幾ら潜ろうとしても何故か進めない暖簾がある。龍神の行動を見るに、恐らくは現世に、それもあの社に繋がっているのだろう。
「騒がしいって……なんだ?」
 だからと言って、自分にそれを知る方法はない。龍神が帰ってくるまではどうしようもないか、と棚から珈琲を取り出し、アイツを待つことにした。
 そうして小一時間が経った頃、もの凄い勢いで龍神が帰ってきた。
「おかえり。で、どうだった」
「はい……その……」
 龍神は、なんと説明して良いのかわからない様子で少し悩むと、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。
「あの、貴方の娘さんが……殴り込みにいらっしゃいました」
「はぁ?」
 今度は此方が困惑する番だった。
「え、わざわざここに来たって言うのかよ」
「はい……」
 困りきった龍神曰く、あの娘は半年間オレが消えたことに悩んだ末、執念で本家にたどり着き祖父の胸ぐらを掴んで凄んだ挙げ句、社までやってきて暴れちらしたらしい。
「そうだよな、そりゃそうなるよな……むしろ良く半年我慢したな」
「今は村の方に取り押さえられて、お茶を飲んでとりあえずは落ち着いたようですが……その、なんと説明するべきか……」
「アンタが考えなしにオレを娶るからそうなる」
「うぅ……、それはそうです」
 見るからにしょんぼりしている龍神に小言を吐きながら、どうすべきか考える。あの娘の性格を考えるに、多分オレが直接言ってやらないと納得はしないだろう。
 ……だからと言ってなんと説明するのか。こう言ったオカルトと言うかスピリチュアルと言うか、そういった物からなるべく遠ざけて育てたのだ、龍神の生け贄になることになった。なんて正直に言ったとて、信じるわけもない。
 そも、幼い時は龍神の生け贄になる予定だったとはいえ彼女が3歳の頃の話だ。本人が覚えているかどうかも怪しい。だったら知らない方が良いのではとも考えるが、ここにたどり着いてしまった以上誤魔化しようもないだろう。
「うーん……なあ、直接話すってのは駄目か?」
「……夢枕に立つことなら出来るかと」
「夢かぁ……まぁ、何も出来ないよかマシか。頼むよ。全部洗いざらい話してみるわ」
「では今日の夜にでも」
 そう言って、龍神は申し訳なさそうに笑った。
 それからあれやこれや準備して早、深夜二時。龍神はぼんやり光る提灯を手に、暖簾を潜る。
「そこ、オレ通れないぜ?」
「ふふ、では手を貸してください」
 渋々手を差し出すと、優しく掴まれて。促されるまま暖簾を潜れば、なんてことはなくそのまま進むことが出来た。
「あんなに潜ろうとして駄目だったのに」
「逃げようとしたんですか?」
「してねぇよ。ただアンタが何処に行ってんのか気になっただけ」
 薄暗く細長い廊下を歩きながらそんなやりとりをしていると、やがて見知った扉が見えてきた。
「ここ、本家の」
「そうですよ。良くわかりましたね」
「そりゃ16までは住んでたんだ。わかるだろ」
 連れられるままに客間へ行くと、すやすやと何時ものように眠っているあの娘がそこにいた。少しやつれたように見えるのはきっと気のせいではないのだろう。
「ほら、どうぞ」
「ん、ありがとな」
 ゆっくり近付いて揺すり起こせば、伏せられた目蓋が大きく開かれて。そうして悲鳴にも近い声を上げ、彼女は飛び起きた。


「で、納得はしたのかい?」
「ええ、本人の口から聞いたことで多少は落ち着いたそうです」
「嗚呼、ならよかったよ。胸ぐらを掴まれた甲斐があったってものさ」
 そう言って彼は涼しい顔で茶を啜る。
「納得はしないだろうと思ったが、まさか乗り込んでくるとはねぇ。ここの場所、知らなかったそうじゃないか」
「遠縁の親戚づたいになんとか辿り着いたそうですよ。それだけ慕われていたんですね」
 その慕っていた人を、僕は私利私欲で奪ってしまった。まったくもって考えが足りなかったのを今回の件で痛感した。
 どうしたら、彼のためになるだろう。考えても、人でない自分にはわからない。
「頼まれてた釣具、届いているから持っていってくれ。……まさか龍神様とあれが生活の真似事なんてし始めるとはね。それも半年もだ。珍しいことだよ」
「そう、ですか……」
「これからも末長く宜しく頼むよ。貴方が我が一族の繁栄を約束する限り、出来うることはしよう」
「ふふ、わかっていますとも。それでは、彼が待っておりますので失礼しますね」
 釣具を片手に立ち上がり、部屋から出る。その足取りは重い。帰ったらきっと夕食の用意がされていることだろう。
 どうしたら、彼はもっと喜んでくれるのだろうか。


「遅い」
「すみません、少々用事を済ませていたので……」
「それにしたってだろ。まぁ、いいけどよ。……ちょっと待ってな。メシ温めるから」
 立ち上がり、ラップをかけたおかずを電子レンジにぶちこむ。ふらっと居なくなることが多い龍神だが、こんなに遅くなるなんて珍しいこともあるもんだと思った。
「すみません、連絡するべきでした。嗚呼、後こちら、約束していた釣具一式です。また足りないものがあったら言ってください」
「お、ありがとうな。これでまた暇潰しが増えるわ」
 それらを受け取り壁に立て掛けると、丁度温まったおかずを取り出した。
「今日はふろふき大根にしてみた」
「先日共に採った大根ですね。美味しそうです」
「そうだよ。後、玉ねぎの味噌汁。あー、そろそろ食材頼まねぇとな」
「……ねぇ、この後、僕とお散歩しませんか?」
「……今10時過ぎだぞ?まぁ、いいけどよ。ならとっとと食っちまえよ」
「はい、いただきます」
 そう言って、むしゃむしゃ食べだした龍神を向かいに座って眺める。
 散歩ね、何処に連れ出すつもりなのかはわからないが、きっとまた見せたいものでもあるのだろう。そうやって蛍が飛んでいる小川やら、流星群やら、月蝕やらを見るために外に連れていかれるのは一度や二度ではない。今度はなんだろうか。楽しみにしつつ、龍神が食い終わるのを待った。
 そうして少しして、龍神が食器を洗い終わった頃、そそくさと近付いて「何処に連れてくんだ?」と問えば「内緒です」とだけ答えた。
 上着を着て、龍神の方へ向き直ると手を取られ、そのまま屋敷の奥へと連れていかれる。
 その場所は、例の暖簾の前だった。
「今日は外じゃないんだな」
「ええ、貴方が行きたい場所ですよ」
「?」
 首をかしげていると、龍神が眼を合わせてきて。それを見ていると、なんだか頭がぼんやりして龍神にもたれ掛かる。
「何……」
「自分勝手でごめんなさい」
 薄れ行く意識の中、身体がふわりと抱き抱えられた感触がする。
 何故龍神が謝ってきたのか、この時のオレにはまだわからなかった。

 そうして目が覚めると、見えたのは見慣れた天井だった。


 訳がわからなかった。
「つまりはオレはお役御免ってか?」
「龍神様はそうおっしゃられていたね。情が湧いて食べられない。とも言っていたけれども」
 布団に横たわるオレの顔を覗き込み、面倒臭そうに祖父が言う。ばあちゃんは何なら泣いていた。いつも泣かせてんな。まぁそれはおいておいて。
 どうやら、オレは龍神に捨てられたらしい。
 なんだって、あんなに大事にしてきた癖に。一番最初に浮かんだのはその言葉だった。
「元通りの生活に戻してやって欲しいってさ。まったく、それがどれだけ難しいかも知らないで」
 心底面倒臭そうに祖父が言う。
 それをぼんやりした頭のまま聞いていた。
「ま、何はともあれ、暫くはここに居なさい」
 そう言って、泣きじゃくるばあちゃんを連れて祖父は部屋を出ていった。
 は?あんな、家事やらなんやらしてやってたのに、追い出されたのかよ。オレの気も知らねぇで。なんなんだアイツ、次会ったらぶん殴ってやる。そう思いつつ、睡魔に襲われてそのまま眠りに就く。
 とりあえず、どうするかは起きたら考えよう。


 結局、あの娘は既に家に帰っていた為、呼び戻すことはせず様子を見ることになった。帰すんならもっと早く帰せたろ、と言う気持ちの反面、別れたあの日の顔を思い出すと、あまり強くは言えないのも確かだった。なんだよ、あんな傷付いた顔をしやがって。どちらかと言えば、被害者はオレの方だろ。そう思ってイライラするが、その感情を向ける所がなくてただ苛立ちばかりが募る。
「クソ、次会ったらただじゃおかねぇ」
 本当に次があるのかと問われれば答えはわからない。だって、こうやって生け贄から戻されるなんてのがあまりないことなのだから仕方がなかった。
「お前も大変だねぇ」
 呑気な祖父に、なんどキレかけたかもわからない。だって、オレに非があるなんてとてもじゃないが思えなかったから。
 そんなこんなでこっちに戻ってから早一週間、なんとなく屋敷に閉じ込められていると感じながらも、特にどうにかしようなんて思えなかった。
 何より、身体が気だるい。
 風邪を引いているような、そんな感じ。日に日に起き上がっている時間が減っていって、ついには寝たきりになってしまっていた。
 きっと、急に現世に戻ってきて身体が疲れたんだろう。そう思うが、何かがおかしい。祖父を頼りたくなくて、最初は気のせいだと言い聞かせていたが、どうしようもない死の気配に嫌気がさした頃、呼んだわけでもなく祖父が部屋に訪ねて来た。
「やあ、まだ生きているかな」
「……んだよ、縁起でもねぇ」
 何とかそう答えて、起き上がろうとするが身体に力が入らなくて。困惑していると、祖父が続ける。
「ところで、よもつへぐいと言う言葉は知っているかい?」
「……なんだそれ。知らねぇよ」
「お前にもわかりやすいように話してやろうか。)『あの世の物を口にすると、この世に戻れなくなる』って言う話だよ」
「!」
「そりゃ、半年も向こうで生活していたんだ。こうなって当たり前だろう?ねぇ、神様」
 もう眼だってあんまり見えてないけど、わざわざ呼び掛けたってことはアイツがきっとそこにいるんだろう。
「龍神」
 蚊の鳴くような声で呼べば、手が握られたような気がする。なんだかほっとして、身体を何とか動かしてそのぼんやりとした感覚にすり寄る。
「知らなかったんだろう。もうとっくにお前は龍神様の眷属扱いなんだよ」
 だから、選びなさい。連れて帰るのか。このまま消えてしまうのを待つのか。
 あんまり感情を出さない祖父の、珍しい怒りの感情がそこにはあった。
 

 ふわふわと身体が浮いている感覚がある。もう、指の先すら動かせない。ここが何処かも、何もかもあやふやで、少しだけ怖かった。
 このままオレは消えてしまうのだろうか。あの娘と会って、幸せならいいとまで言わせてしまったのに。それはやだな、とぼんやり思う。なんだって、まだアイツを殴っていない。
 霞む視界に燃えるような赤が見える。ふ、と唇に何かが重ねられて、そのまま柔らかいものが差し込まれた。
 ああ、甘い。
 じわじわと熱が伝わってきて、やがてそれが舌だと気付く。気付いたところで何か出来るわけでもなく、与えられるがまま唾液を飲み下した。
 息がうまく出来なくて苦しい。でもそれと同時に気持ち良くもあって。無我夢中で舌にしゃぶりつく。
 やがてゆっくり離れていって。それをしてきたのが龍神だとようやく気付いた。
「聞こえますか?」
 声はまだ出ない。代わりにこくん、と小さく頷く。
「嗚呼、良かった。間に合ったんですね」
 ぎゅうっと抱き締められて、じわじわと冷えた身体が温まっていく。
「今から貴方を抱きます。貴方を生かすためには、それしかない」
 苦しそうな顔で、龍神は言う。なんでそんな顔すんだよ。そう言おうにも、まだまだ言うことを聞かない身体が許してはくれなかった。
 ゆっくり頷けばまたキスをされて。オレだってキスの一つや二つくらいしたことあるってのに、それだけでどうしようもないくらい乱されていく。
 甘い露がもっと欲しくて、自分から舌にしゃぶりつく。
「んんっ、っ……」
 ぞくぞくと背筋を快感が駆け抜けていく。嗚呼、気持ちがいい。冷えきった身体に少しずつ温もりが戻ってきて、身動ぎをした。
「はぁ、っ……」
 温かい手が、肌を撫でまわす。女にするみたいに、大事に大事にだ。それが擽ったくって、でも嫌じゃなくて困惑していると、またキスを落とされる。
「ねぇ、貴方の名前。教えてください」
「……アンタだって、」
 いつの間にか声が戻っていて、風邪の時みたいに掠れた酷い声で言う。
「僕はね、アルジェンティって言うんです。貴方は?」
 オレたち、半年も一緒に過ごしてたってのにお互いの名前も知らなかったんだ。なんだかおかしくなってへにゃっと笑いながら答える。そうすると、アルジェンティは嬉しそうに微笑んだ。
 何度も何度も名前を呼ばれて、なんだか照れ臭くなってくる。
「ねぇ、名前を呼んでください。貴方の声で呼ばれたい」
「……アルジェンティ」
「ありがとうございます。……都合がいいと思うかもしれない。後で何度でも殴ってくれて構わないので……。貴方のことが好きです」
 あの時と変わらない真っ直ぐな瞳で、アルジェンティはそう言った。
 オレだって、好きじゃなかったら一緒に過ごしてねぇよ。そう言いたかったけど、唇を塞がれて叶わなかった。
「っ、ぅ!」
 甘露な蜜に夢中になっていると、いつの間にやら服が脱がされていて。傷跡の多い、あまり綺麗な身体じゃねぇから恥ずかしがっていると、傷跡をなぞられた。
「綺麗です。とても……」
 そんなわけないのに、何故だかアルジェンティに言われるとそんな気がして、無理やり腕を持ち上げると、アイツの背中に手をまわす。
「ふふ、少し勃ってる」
「うるせぇっ」
 彫刻みたいに美しい手が、己の陰茎に絡んで。直接的な快感に、思わず身体が跳ねる。そりゃ、こんな風にキスされてりゃそうもなるだろ。勝手に腰が動いて、快感が背筋を駆け抜けていく。そうして気持ち良くなっていると、徐に陰茎の根元をぎゅっと締められた。
「なっ、」
「貴方は出したら駄目です。ただでさえ消耗しているんですから」
 そう囁くと、何処からか取り出した紐で根元を縛られてしまった。状況が飲み込めず、は?とアイツの顔を見ていると、そのまま首筋に吸い付かれて、じりっとした痛みが走る。
「んんっ、」
「何も怖がらなくていいんですよ。全部僕に任せてください」
 別に怖くなんか、そう言いかけて、そのまま股に顔を埋められて思わず黙った。陰茎に舌を這わせて、滲み出る先走りを舌先でほじられて、直接的な快感に身体をびくびくと跳ねさせる。
「あ、うっ!」
 先程まで冷えきっていたのが嘘みたいに、身体中が熱い。先端をざりざりと削るように舐められて、嫌でも感じてしまう。気持ちいいけど、根元を縛られているからイけない。ぐるぐると身体の中で熱が出口を探して走り回っているような錯覚に、脳を焼かれていく。
「あぁっ、ぐぅ……!いきたいっ、あるじぇんてぃ!」
「ふふ、でも駄目です」
 いたずらっぽく細められる瞳に、胸が高鳴る。イきたくってかくかくと腰が動くが、そうすればそうするほど陰茎に刺激が来て追い詰められる。気持ちいいけど、辛い。早く解放されたい。でも、どうしたら終わるのか?わからなくて、無意識にシーツを掴む。そこでようやく、ここがいつもの寝室だと気付いた。
「い、あっ!きついっ!」
「でも、これからもっとすごいことをするんですよ?」
 すごいこと?とろけた頭で考えていると、アイツは後孔に舌を這わせた。ぞわり、と鳥肌が立ち、何をしようとしているのか一瞬で理解する。
「なっ、そんなとこっ!」
「汚くなんかありませんから、存分に気持ち良くなって?」
 皺を1本1本伸ばすように舐められ、羞恥に顔が赤くなる。そんなとこ、舐めるなんて。でも、ぞわりぞわりと快感の芽が確かにそこにあって、あまりのことに困惑する。
「っ、ぅ!まって、それっ……無理!」
「貴方の腹の奥に僕の精を吐き出すのが一番手っ取り早いんです」
「っ!」
 今なんて言った?いや、薄々そうだろうとは思ったけど!文句を言おうと口を開けるが、そのタイミングでにゅるりと舌先がナカに挿入ってきて、すぐに何も考えられなくなる。
「あ、ぁ!」
 じくじくと舐められた場所が疼いていく。そんなところ舐められたことなんてないのに、気持ち良くって何が何やらわからなくなる。気付けば本能のまま喘いでいて、ぐにぐにと舌を締め付けた。
「んあ、ぅ……っ!そこ、なんかへんっ」
 ある一点に触れた時、びりびりと脳天を突き抜けるような快感が駆け抜けて、思わず声を上げる。すると、弱点でも見つけたと言わんばかりにそこばかりぐりぐりと刺激され、目の前がチカチカと明滅した。
「ぐぅ!それおかしっ!あ゛ぁっ、」
 気持ち良くて、でもイけなくて。それから逃れようとずりずり身を捩るが逃れられるわけもなく。どんどん追い詰められていく。
「ぐぅ~~~~っ!」
 しこりを抉られ、達したような感覚に身体をビクビクと跳ねさせる。でも、精が出せた訳ではなくって。ぐるぐると身体のナカを駆け巡る熱に侵されていく。
「~~~~っ!♡♡」
「ふふ、気持ち良さそう」
「ば、か!ぁ……加減しろっ!」
「……ごめんなさい、つい。でもお陰でだいぶ拡がりましたよ?」
 ぐにぐに、と3本の指を差し込まれて、拡げるように動かされ、遠慮のない動きにびくりっと身体が跳ねる。
 こんにゃろ、後で覚えとけよ。そう言う前に腹の上にアイツの陰茎を乗せられて思わず黙った。
「……でっか」
「これでも随分と小さくした方なんですが……」
「そんなの、挿入らねぇよっ」
 子供の腕くらいはありそうなイチモツ。長さだって結構ある。人間のそれとは明らかに形の違うそれに、心から怯えた。
「無理っ」
「大丈夫ですよ、だってここもう4本も指を咥え込んで離さないんですよ?」
「っ、ぅ!ばか!動かすなっ、そんなわけ……アンタなんかしたろ!」
「さあ、どうでしょう。……ほら、きっと大丈夫。気持ちいいはずですから」
 子供にでも言い聞かせるような声音で囁かれ、ぶるりと身体を震わせる。
 確かに、舌だけであんなに気持ち良かったんだ。こんなの挿入された日にはどうにかなってしまう。
「んあ、♡」
「今想像しましたか?」
「っ、うっせぇ」
 アイツの深い緑と赤の瞳を見つめ、腹を括る。こうなりゃ自棄だ。好きにすればいい。
 脈打つグロい陰茎に手を伸ばし、軽く擦ればアイツが深い溜め息を吐いた。
 どの道、今のオレが生き残るにはこれしかないのだ。
「こいよっ、受け止めてやるから」
「はい!」
 ゆっくり、太いとこに比べるとまだ細い先端が飲み込まれていく。孔が拡がったことのないほど拡がっているのがわかって、恐怖に震えていると額にキスを落とされた。
「ねぇ、こっちを見てください」
 言われた通り瞳を見つめると、くらりと目眩がして、なんだか気持ち良くてたまらなくなる。
「はぁっ、あぁ♡♡」
「貴方の感覚を今だけ少しだけ弄りました。これで耐えてください」
 とろりと縛られた陰茎の先端から蜜が溢れて布団を汚す。拡げるように動かされる度、びりびりと脳天を突き抜けるような快感に襲われて、気持ちいい以外何も考えられなくなる。
「あはっ♡♡うぅ~~~っ!♡♡」
「っ、ぅ……」
 またあの甘い露が欲しくて、強請るように唇にキスをすれば、口を開いてくれた。垂らされる唾液を舌で追いながら、かくかくと腰を揺らす。 
「う゛あっ、あるじぇんてぃっ♡♡」
「後半分くらいですから!」
 絶対受け入れられないと思ったのに、ゆっくりとつるりとしたそれが飲み込まれていって、気付けば下腹がぽっこりと膨れていた。
「お゛っ♡♡♡」
 ごちゅっと聞くに耐えない音がして、頭を殴られたみたいな衝撃が来て思わずイってしまう。それでも己の陰茎からは雫が垂れるのみで、頭が可笑しくなりそうなほどの快感に飲まれていく。
 後にそこは結腸と呼ばれる場所だと知ったが、そこでの快感だってまだ知らないはずなのに気持ち良くって仕方がない。
「ぐぅ~~~~っ♡♡う゛ぅ、あ!♡♡おかしくなるぅ!♡♡♡」
「っ、大丈夫、大丈夫ですから!」
 そうして、何度絶頂したのかもわからないくらいぐちゃぐちゃになって、夜が白じみ始めた頃、ようやく全部飲み込んだらしかった。らしかったというのは、もうまともな思考なんて残っていなくて、断片的にしか覚えていないからである。
「ほら、全部挿入った」
「ひぃっ♡♡はらんなか、いっぱい♡♡♡」
「ふふ、可愛い……ナカにもっと注ぎますね♡」
 やっとこさ挿入された陰茎を思い切りずるるっと引き抜かれ、あり得ないほどの快感に頭が焼ける。
「おおおっ♡♡♡ぐぅ~~~っ!♡♡♡」
 そうして、引き抜かれたそれをそのままばつん!と差し込まれ、白目を剥いて飛びかけた。が、すぐ次の衝撃に揺さぶり起こされる。
「がぁっ!♡♡♡う゛、あ~~~っ!♡♡」
「っ、うぐっ!」
「しぬ!これしんじゃう♡♡♡」
「はぁっ、ふふ……駄目ですよ♡絶対に死なせなんてしませんから♡」
 気持ちよすぎてアイツが何を言っているのかも良くわからない。でも、出したい。出したくて陰茎に手を伸ばせば、そのまま腕を掴まれ布団に押し付けられた。
「なんれっ♡♡つらいっ♡♡」
「出したら意味がなくなってしまいますよ?」
「出したいっ!♡♡ださせて♡♡」
「……仕方がないですね」
 アイツは少し考えた後、紐を緩めてくれて。嗚呼、助かった。そう思った時にはごりごりと結腸を苛められ、がくがくと全身を震わせながら果てた。
「~~~~~っ!!♡♡♡」
 勢いのない白濁がどろどろと溢れ落ちていったかと思えば、そのまま色の付いた液体がしょろしょろと溢れていって、そこでようやく漏らしたのだと気付く。
 が、羞恥はすぐに快感に飲み込まれて、馬鹿になった頭で、ただただ喘ぐしか出来なかった。
「がはっ♡♡♡あるじぇんてぃ♡♡♡だめんなる♡♡♡」
「良いですよ、もっと駄目になって?」
「あ゛ぁ~~~~っ!♡♡♡」
 アイツに揺さぶられながら必死にしがみついて、壊れたみたいに何度も果てる。気持ちいい、はらんなか擦られて、馬鹿みたいにイってる。
「フーッ……そろそろ出しますっ、受け止めてください」
「うん♡♡♡うけとめるから♡♡♡おれできもちよくなって♡♡♡」
「っう!」
 びゅくびゅくとありえない量が腹のナカに入ってきて、ぽっこりと膨らむ。それにさえイク始末で。どうしようもなくて早く止むのを待つが一向に止まる気配はなく。それどころか根元が膨らみだして、更にキツくなる。
 そこで限界が来たのだろう。ぶつりと意識が途絶えた。


 次に目が覚めたのはオレたちが暮らしていた屋敷の布団の上で。身体は綺麗に清められていて、丸でアレが夢みたいだった。
 いや、思いっきり両腕うっ血してるから夢じゃねえわ。
「で、アルジェンティ。アンタオレに何か言うことは?」
 布団の隣で土下座をしているアルジェンティに問えば、蚊の鳴くような声で「ごめんなさい、すいません、申し訳ありませんでした」とありとあらゆる謝罪が返ってきて、思わず吹き出す。
「いや、そのなんだ。オレだって知らなかったしアンタだってそうなんだろ?じゃあ仕方がねぇよ」
 我ながら甘いなと思うが、まぁ、惚れた弱みってヤツだろ。気だるい身体をなんとか起こしてアイツの頭を撫でてやれば、犬みたいに目を輝かせた。
 アンタ、ほんと龍神ってよりは犬みてぇだな。
 そうしてオレの名前を呼んでくるアイツの唇に人差し指を押し当てて言ってやる。
「オレぁその名前にいい思い出がなくってな。ブートヒルって名乗ってんだ。これからはそう呼んでくれよ、ダーリン?」
 
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