スタレ



「……」
「何固まってんだよ兄弟」
 いつも聞く声よりも幼く高い声が言う。驚いて固まっていると、ぶかぶかの服を着た少年がこちらにやって来て首をかしげた。
「アルジェンティ?」
「いえ……その、ブートヒルさんですよね?」
「目の前でこうなったの見てただろ?」
「そうですけども」
 一先ず抱き抱え、ベッドの縁に座らせると思わず頭を抱える。
 つい先ほどまで、僕たちは友である開拓者に誘われて模擬宇宙の中にいた筈だ。宇宙ステーションを模した世界で戦っていると、ふと現れたこの部屋に足を踏み入れた途端扉がしまって出れなくなったのだ。そこまではまだわかる。問題は扉に記された文字で。
「セックスしないと出れない部屋なんだろ?」
「そんな……はしたないですよ」
「アンタが言い出したんだろ……。全く、なんでそんなのがあんだよ」
 正直、最初はこの組み合わせで良かったと思った。僕たちはその、恋仲であるし、大きな声では言えないが性交だってしている。問題はその後だった。
 追加効果があったのだ。
「どちらかがこの奇物の影響を受ける」
 ベッドサイドのテーブルの上にあった書き置きにはそう書かれており、横にはサイコロのような物が置かれていた。それを持った瞬間、彼がこうなってしまったのだ。
「もう、何があるかわからないのですから勝手に触ってはならないとあれ程……」
「悪かったって。アンタといるとつい気が緩んじまう」
 そんな、頼られて嬉しいなんて。こんな状況でなければ喜んでいたけれども、だ。
「どうにかして出なければ」
「考えはあんのかよ?」
「……」
 正直、ない。攻撃を跳ね返された今、ここから出るには書かれた通りにするしかないのではないだろうか。でも、それにしたって彼が……。
「ほら、やっぱりねぇじゃん」
「っ、でも……それでは貴方に負担がかかりすぎる」
「今は早く出ねぇとだろ。アイツらが幾ら強くったって二人じゃたかが知れてる」
 正論。あまりにも正論すぎて黙ることしか出来ない。
「それとも、ガキのオレじゃ勃たねぇって?」
「それは……」
 正直それはわからない。そもそもそんなこと考えたこともないし、その状況になった今でもわからないのだ。
 困って固まったままの僕の手を彼が引っ張る。力はそのままなのか、容易く引き寄せられると、そのまま押し倒された。
「おら、覚悟決めな」
「なんでそんな乗り気なんですか!」
「そんなの……」
 アンタが面白いからに決まってんだろ。
 馬乗りになると、小悪魔のような笑みで彼はそう囁いた。
 


 ちゅっと音を立てて唇を吸われたかと思えば、胸ぐらを掴まれたまま、驚いて開かれた口に小さい舌が入り込んでくる。いつもよりも幾分か高い体温にじわりじわりと熱が燻っていくのがわかって思わず頭を抱えた。
「んんっ、ふっ……」
 口の隙間から吐息が漏れる。その様すらいやらしくて、嫌でも腰がずくっと重くなる。
 一口で食べれてしまうくらい小さい舌に恐る恐る吸い付き、誘われるがまま絡めれば、彼の身体が小さく跳ねた。
 こんな少年相手に興奮なんかして、と罪悪感に苛まれながら、姿こそ少年だがいつもと変わらない彼に欲情する。どうしようもない。こんなの、狂ってしまう。
「ぎゃははっ、ひでぇ顔」
「あまりからかわないで……」
「からかってねぇよ。アンタだから許してんだぜ?」
 そう囁きながら僕に跨がる彼はすでに全裸で、どうしたらいいかわからず宙ぶらりんの手を取ると、普段とそう変わらない金属のボディに触れさせた。
「この奇物すげぇな。ほら、そのまま小さくなってんだろ?でも、なんで足は人工皮膚なんだろうな」
 確かに、腹の装甲の触り心地はいつものそれだ。だからこそ、余計に頭が混乱する。
 触れただけで、もうそれどころではない僕に笑いかけながら彼が言う。
「なんだ、無理かと思ったがちゃあんとおっ勃ててんじゃん」
「なっ、はしたないですよ」
「今からそのはしたないこと、するんだろ?」
 首をかしげ服の上からそれを撫でる彼にまた煽られて、それでもなお動けないでいると彼は心底愉快そうに笑った。
 そうしてズボンを寛げると、すでに勃ち上がった陰茎を取り出し言う。
「咥えてやるよ」
「っ、」
「はは、また硬くなった。分りやすいヤツ」
 小さな手が這い回る。その手付きは無垢な少年のそれではなく、何処をどうすれば悦ぶのかわかりきっている動きで。彼は悪戯に微笑むと、見せ付けるように陰茎に頬擦りをしながら言った。
「流石に奥までは入らねぇな」
「ブートヒルさ、」
「まぁ見てなって」
 先走りの滲む先端を赤い舌が舐る。それから目が離せず、思わず息を飲んだ。彼は嫌がる素振りもなく、アイスキャンディでも食べるように、美味しそうにそれにしゃぶりつく。
「はぁっ♡」
「っ、うぅ……」
 唾液を手に絡めながら扱かれ、耐えきれずに声が漏れる。彼の頭に手を置き、無茶苦茶に突いてしまいたくなる衝動をなんとか抑え、その滑らかな髪を撫でた。
「っ♡♡」
「はーっ、ブートヒルさんっ……」
 気持ち良さそうに目を細める彼が可愛くて、余裕の無い状態で微笑みかければ、徐に尿道口に舌を差し込まれ、つぷつぷと出し入れをされた。巧みな責めに精が上り詰めてきて、耐えきれなくてそのまま小さな口に精を吐き掛ける。
「っ!ごめんなさいっ」
 こくりこくりと嚥下するその刺激すら気持ち良くて、頭がくらくらする。飲み下し終えたのか、彼がぱっと離れて「ごちそーさん」とだけ呟いた。
「気持ち良かったか?」
「はぁっ、それはもう」
「なら良かった」
 次はこっちな♡とそのまま彼はベッドに転がると、子供の身体に似合わない艶かしさで脚を開く。
 誘われるがままに、とろとろと蜜を溢すそこにむしゃぶりついた。
「ひゃあ♡♡」
 彼の口から媚びきった喘ぎが漏れる。いつもよりも幾分か高い声に、何かとてもいけないことをしているような気がして、それでも止まることなんて出来なかった。
「あ、♡んんっ♡♡ひっ!♡」
 舌先で小さな陰核を苛めてやれば、彼は身体をびくびくと跳ねさせながら感じ入る。可愛らしい。もっと乱れているところが見たい。でも、いつも以上に繊細なそこを傷付けたくはない。舌なら大丈夫かと、唾液を滴しながらゆっくりと舌先を沈めていけば、きゅうきゅうとナカが絡み付いてきた。
「んあぁ♡♡あるじぇんてぃ、それっ♡♡」
「ふふ、お気に召しましたか?」
「う、きもちいっ♡♡あつい♡♡」
 つぷつぷと舌の出し入れを繰り返しながら、陰核を指で優しく押し潰す。瞬間、かくんと大きく身体を跳ねさせたかと思うと、ナカがぎゅっと締まった。どうやら軽くイってしまったようだ。
「んん~~~っ♡♡」
 流れ落ちる蜜を啜り、舌の根元まで潜り込ませると、壁を抉るように擦る。
「っ、はぁ♡♡゛あぁっ!♡♡」
 拒絶をするように、頭に手が置かれる。嫌なのかと離れようと思ったが、力が入ることの無いその手に、もっとと懇願されているような気がして。じゅぷじゅぷと音を立てながら抜き差しを繰り返す。
「あ、あ!♡♡いくっ♡♡いっ、ぅ~~~っ♡♡」
 がくがくと内腿が震えて、ナカが搾り取るように収縮する。様子を伺うように彼を見れば、気持ち良さそうにとろんと蕩けきった顔でこちらを見ていて。ずくり、と腰が重くなった。
「っ、どうでした?」
「はぁっ、はぁ♡♡きくなぁ!」
「ふふ、良かったですね。さて、これで開いてくれるといいのですが……」
 彼の呼吸が落ち着くのを待ちながら、立ち上がり扉に近付くが開く様子はない。やはり、これでは駄目か。しかしながら今の彼に挿入するわけにはいかない。
 どうするか途方に暮れていると、落ち着いた彼が手招きをした。
「どうかしましたか?」
「なぁ、脚に挟んだらどうだ?ほら、スマタってヤツ」
「……ブートヒルさん」
「ほら、おいで?」
 いつもと違って柔らかいぜ?そんな風に誘われて、もうすでにぐずぐずな理性では抗うことは叶わなかった。



「はぁっ、はぁっ」
 熱い吐息と、ぱちゅぱちゅと間抜けな音が部屋に響く。人工皮膚の太ももの隙間に消えては現れる陰茎に、まるでシているようなそんな錯覚さえ覚えながら、いつもよりも小さい小さい彼を抱き締める。
「あ、ぅ♡♡ん、♡♡」
 挿入してもないのに彼が控えめに喘ぐ。表情は蕩けきっていて、気持ち良さそうで。確かな幸福感がそこにはあった。
 いつもと違う人工皮膚の柔らかさに、そして温かさに少しずつ上り詰めていく。
「あるっ、♡♡あるじぇんてぃ♡♡」
「ブートヒルさんっ、もう少しですから」
「んっ♡♡一緒がいい♡♡」
「っ、もう!煽らないでください!」
 脚の間に夢中で腰を打ち付ける。お互いに貪り合うようなキスを交わしながら、その時は来た。
「くっ、出しますよ」
「うん♡♡いっぱいちょうだい♡♡」
 首筋に何度も噛みつき、彼の腹にびゅくびゅくと精を放つ。二度目とは思えない濃さの白濁が、彼の装甲を汚して、それとほとんど同時に彼がびくびくと身体を跳ねさせた。
 すると、ぽん、と気の抜けた音がして、先程まで小さい身体だった彼が元に戻った。
「あ?♡♡」
 それは実質この部屋が開いたことを意味する。やった、これで開拓者達と合流出来る!そう思って、未だぼんやりとしている彼に話しかけようとした時、気付いてしまった。
 腹に出した精を、物欲しそうに眺める彼を。
 


「穹さん」
「あっ!よかった。無事だったんだな」
 扉から出て、散々待たせていたらしい彼らと合流する。もちろん、ブートヒルさんも一緒に。
「で、なんでブートヒルは小脇に抱えられてるんだ?」
「いえ、どうやら具合が悪いようでして……。折角誘っていただいたのですが、今日はこのまま船に戻ってもよろしいですか?」
 ブートヒルさんが何か言う前に、遮るようにして話を進める。何か言いたげな穹さんと、同行してくださっていた霊砂さんに頭を下げる。
「うーん……まぁ、そう言うことなら仕方ないよな。ヘルタには俺から伝えておくよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ出ようか。霊砂?」
「……いえ、なんでも」
 恐らくこの場にいる者は薄々勘づいている。ただ、誰も何かを言い出そうとはしなかった。
 いや、言わせる気なんてまったくないのだ。
 そうしてそのままその場を後にすると、停めてあったプライスレス号へ急ぐ。その間、ブートヒルさんはとても静かだった。



 半ば雪崩れ込むように船のベッドルームへ入っていくと、彼をベッドにゆっくり下ろす。いつもなら小言のひとつやふたつ呟いているであろう状況なのに、やっぱり彼は喋らない。
 覆い被さり、至近距離で彼の顔を覗きこむ。
「……明日っからどんな顔でアイツらと会えばいいんだよ」
「気にする必要、ありますか?」
「アンタ、そう言うところだぞ」
 ようやく喋った彼の額にキスを落とし、ぎゅうっと抱き締める。なんだ、怒っていたわけではないのか。よかった。だなんて安心しながら 、額と額をくっつけて、それこそ甘えるみたいにどちらからともなくキスをする。
「ブートヒルさん、貴方を抱きたい」
「っ、さっき抱いただろ」
「貴方のここに精を注ぎ込みたい。貴方も同じ気持ちでしょう?」
 腹を擦りながらわざわざ言葉にして囁けば、小さく「好きにしろ」と声がして。嬉しくなってぎゅうっと強く抱き締める。
 差し出された舌に吸い付きながら、ゆっくり彼のズボンを下ろしぬかるんだそこに指を差し込む。
「ちゅ、……ふふ、とろとろだ」
「はぁ……♡わざわざ口にすんな。ばか」
 こう言うところが愛らしくて、つい苛めたくなってしまうが多分無意識なんだろう。絡み付いてくるナカを拡げながら、熱っぽく囁く。
「先程はあんなに乗り気だったのに」
「アレは……んんっ♡♡困ってるアンタが可愛くて……」
 ようやく吐かれた本音に、思わず微笑む。本当に困った人だ。
「今夜は寝かせませんからね」
 そうやって逃げ道をなくして、じわじわ追い詰めていく。
 少し触っただけでくちくちといやらしい音を立てるそこを苛めてやれば、彼は物足りないと言わんばかりに腰をくねらせた。
「あるっ、もういいから……♡早くアンタが欲しい」
「ふふ、ずっとお預けでしたからね。良いですよ」
 前を寛げ、陰茎を取り出せばそれを熱の籠った目で見た彼が吐息を吐いた。
 ぱくぱくと口を開くそこに、陰茎を押し当てる。
「あ♡♡くるっ♡♡」
 しおらしい彼に思わず口角を上げながら、奥めがけて腰を打ち付けた。
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