スタレ




 彼の手が服の中に差し込まれる。さっきまで彼の部屋で普通に雑談をしていたのに、何処でスイッチを入れてしまったんだ、と彼を睨めば、流れ行く水みたいに透き通った綺麗な瞳と目が合う。俺はその瞳がとても好きだ。
「誘ったお前が悪い」
「さそっ!?はぁ?」
 何時誘ったって?ただ普通に話をしていただけじゃないか。壁際に追い詰められながら慌てふためいていると、彼がふっと笑った。やっぱり、丹恒って顔が良いよな、と思わず見惚れていると、腹を撫でていた手がすっと胸の突起へと辿り着く。
「っ、ぅ!」
「そんな目で見るな。加減が出来なくなる」
「別にっ、見てない、だろ!」
 何度も抱かれる内に弱点になってしまったそこを焦らすかのように柔く撫でられ、そんな気もなかった身体が熱を持ち出す。ずるい、俺が彼の誘いを断れないのなんて分かってる癖に。
「んんっ、あっ!……丹恒ぉ」
「なんだ?」
 彼の服にしがみつきながら、切なくて名前を呼べば明らかに楽しそうな彼がわざとらしく聞いてくる。どうやら口に出して言って欲しいみたいだ。でも、そんなこと言えるわけがない。
「意地悪っ」
「意地悪?俺はただ、お前がそうして欲しそうにしていたからしているだけだが」
 輪郭をくるくるなぞるように刺激をしながらそう言われ、思考が蕩けだす。もっと気持ちよくなりたいと、縋るように擦り寄るが、それじゃあ伝わらないとでも言わんばかりに焦らされて、ぎゅうっと服を掴んだ。
「っぁ、う……丹恒」
「ほら、どうして欲しいのか言ってみろ」
「……っ、はぁっ、……何時もみたいに、っ触ってほしい」
 ついに我慢できなくなってしどろもどろに呟けば、すっかり勃ち上がった胸の突起をぎゅっと摘まれた。
「あぁっ!」
 こりこりと敏感なそこを押し潰され、急な刺激に身体が跳ねる。嗚呼、気持ちが良い。良いけど切ない。何度も拓かれた腹の奥が疼いて、もっと欲しいと強請りだす。
「気持ちいいか?」
「う、ぁっ!わかってるだろっ、んんっ」
「穹、お前の口から聞きたい」
「っ!」
 ズルい!今名前呼んだ!そんな言葉が口をついて出掛けたが慌てて飲み込んだ。こうなればヤケだ。何としても仕返ししてやる。
 服を自分から捲り上げ、彼の目を見ながら言う。
「もっと気持ちよくなりたい」
 するとどうだろう。彼は動きを止めてしまったではないか。流石に露骨すぎたか?っと羞恥にみるみる顔が赤くなる。慌てて「やっぱ、なし」と呟き目を逸らすと、抱き上げられた。
「なっ、」
「お前はもっと自覚した方がいい」
 そのままベッドへと運ばれる。逃げようとするが、その前に身体を押さえ込まれ身動きが取れなくなる。
 嗚呼、ヤバいスイッチ押しちゃったかも。そう思ったが時すでに遅し。噛み付くように唇にキスをされた。
「んんーっ!」
 唇の隙間から舌が差し込まれ、歯列をなぞる様に刺激される。ぞわぞわと鳥肌が立って、思わずぎゅっと目を瞑れば口を開けろと言わんばかりに舌でノックされた。
 嫌だ、開けたらそれこそ食われる。そう思いなんとか逃れようとするが、両胸の突起を指で摘まれ敢え無く口を開いてしまう。
 ……俺の身体のバカ。
「はぁっ、んんっ!」
 舌が口内に侵入してきて、あっという間に舌を絡め取られる。同時に胸の突起を弄り回され身体がびくりと跳ねた。酸欠で頭がぼーっとしてきて、なんで拒もうとしてたんだっけ?と思い始める。いいじゃん、もっと気持ちよくなりたいだろ。甘く囁く誘惑にもういいか、と傾きそうになってはっと正気に戻った。
 だって、このまま抱かれたら間違いなく明日足腰立たなくなる!そうしたらまた皆に可哀想な者を見る目で見られるだろ。それだけはごめんだ!
「んんっ、たんこー!待って、」
「この状況で待てると思うか?」
「思わないけど!っんあ、……まって、口でするからっ!」
 俺の言葉に、身体を弄っていた手が止まる。おっ、効果あり。出すものさえ出せば、すっきりしてそれで終わるかもしれないじゃないか。そう思いながら、拘束が緩んだのを良いことにそのまま起き上がる。
「出来るのか?」
「はぁっ、やる」
 のそのそと彼に近付き、ベルトに手を掛ける。ズボンと下着を脱がし、陰茎を取り出せばその大きさに思わず生唾を飲んだ。
 これが、尻に挿入るんだ。そう思うと、中途半端に刺激された身体がまた疼き出す。
「してくれるんだろう?」
「っ、」
 促されるままに、前に教えて貰った時のことを思い出して、すでに先走りの滲む先端をぱくりと咥え込む。苦いようなしょっぱいような、独特の風味が口に広がり、それにさえ興奮した。
「くっ」
 小さく呻いた彼に、つい調子に乗って辿々しい動きで陰茎を刺激していく。裏筋を舐め上げれば、更に大きくなったそれに何処まで大きくなるんだよと内心思いながら、奉仕を続ける。
 全然慣れてないから下手くそだろうけど、それでもイかせられるだろうか。ふと不安になったが、見なかったことにして。
「ふっ、んん……たんこう、きもちいい?」
「っそこで喋るな」
 余裕のなさそうな顔で言うもんだから、更に調子に乗って、咥えられるとこまで咥えると出し入れを繰り返す。顎が疲れてきたが、俺の明日のためだ、頑張ろう。
 そうしてその動きを繰り返すが、一向にその時は来ない。表情を見る限り限界そうなのに、なんでだろうか。そう思っていると、器用にズボンを脱がされた。
「っ、まって」
「待たない」
 そのまま下着もずり下げると、何処から出したのか潤滑油を指に絡め、俺のナカにゆっくり挿し込んだ。
 瞬間、蕩けるように甘い快感が俺を責め立てる。
「あぁっ、ん♡たんこー、それやだぁ♡」
「手、止まってるぞ。俺をイかせたいんだろう?」
 そんな事言われたって、集中出来るわけ無いだろ。そう思いながらも、何とかイって欲しくて咥えきれないところは手で刺激しながら愛撫する。
「んんっ♡、ふっ!うっ、んっ♡」
 ぐちゅぐちゅという水音が、口からしているのかそれとも後孔からしているのかすらわからず、くぐもった嬌声を上げながらしゃぶりつく。これがおれんなかにはいったら、どうなっちゃうんだろう。酸欠でふわふわする頭で考えては後孔を締め付けた。
「穹、そろそろ出そうだ」
 余裕が無さそうに吐息混じりに彼が言う。やった、これで終わる。そう思ったのと同時に、火を着けられてしまった身体がどうしようもなく疼く。もっと気持ち良くなりたいと腰が勝手にかくかく揺れて、言うことを聞かない。
「たんこう、出して♡」
 舌っ足らずに呟けば、その時は来た。口の中のそれがびくびく震えたかと思うと、勢い良く白濁を吐き出したのだ。
 独特の青臭さが口内に広がり、吐き戻しそうになるのを耐えながらなんとか飲み下す。
「っ♡、ふぅ♡」
「くっ、穹」
 何度も名前を呼ばれ、その度に後孔がきゅんきゅんする。苦しいけど、嬉しい。量のある白濁をなんとか飲み干し、褒めて欲しくて口を開ける。顎を擽るように撫でられて、ぞわぞわと鳥肌が立った。
「はぁっ♡たんこう、全部飲めた♡」
「全部飲めて偉いな。こっちも大分拡がったぞ」
「んん〜〜〜っ♡♡」
 頭を撫でられ、甘イキをキメる。気持ちが良い。あれ、なんであんなにいやなんだっけ。この頃にはもう、明日がどうだとか全部どうでも良くなっていた。
「たんこー♡♡こっちにも頂戴?♡♡」
 指を挿入されたままの後孔をきゅうきゅう締め付けながら乞い願う。だって、きもちいいことは良いことなんでしょう?
「……、嫌だったんじゃないのか?」
「おなかせつないっ♡♡っあ、たんこうの欲しい♡♡」
 自分が何を口走っているのかももうわからず、泣きじゃくるように言う。そうすると、後孔に挿入されていた指が引き抜かれた。
「ああっ♡♡」
 そのまま押し倒され、彼の陰茎が後孔に当てられる。期待にひくつく後孔が吸い付くように先端をちゅうちゅう味わっている。早く、早く。浅く呼吸をしながら、彼の酷く興奮した様子の目を覗き込んだ。
 瞬間、一気に奥まで陰茎を差し込まれ、衝撃におもわず射精する。
「〜〜〜〜っ!!♡♡♡」
 ごちゅ、と嫌な音がして、目の前がチカチカ明滅する。何が起こっているのかわからず、眼の前の彼にしがみつきながらイキ狂う。
「っ、穹」
「お゛っ、♡♡あ゛、んっ♡♡たんこ、おっきい♡♡」
 カリ首で前立腺をごりごり抉られ、目の前に火花が飛び散る。気持ちが良すぎてすぐにでも意識が飛びそうになるのをなんとか繋ぎ止めて、差し出された彼の手を掴む。なんだっけこれ、恋人繋ぎ?ああ、嬉しいな。そう思いながら、深みへと落ちていく。
「ん゛お゛っ、♡♡んんっ!♡♡あ゛ぁ゛っ!♡♡」
 ぷしゅっと聞き慣れない音がして、液体が自分の腹を汚す。漏らしたかもしれない、と思ったが、すぐに快感に上書きされてしまった。
「穹、気持ちいいか?」
「うん♡♡きもちいっ♡♡あ゛ぁっ、たんこー、たんこう!♡♡♡」
 彼の名を何度もうわ言のように呼びながら何度目かもわからない絶頂を迎える。
 結局解放されたのは翌朝で、やっぱり足腰はがくがくで、皆から憐れみのこもった目で見られたのは言うまでもない。
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