ルクエド




 初めはただのじゃれ合いのつもりだった。
 どんなじゃれ合いだよ、と思うかもしれないが酒が入ってたんだ。そりゃあ思考回路だって鈍る。
 けしかけた周りはげらげら笑ってるし、それをやっている俺達は気まずいのなんのって。そこで終わればよかった話なんだけどな。

「なあ、またしたい」

 早い話が、癖になっちまったんだ。




 初め聞いた時は、聞き間違いかと思った。だってそうだろ。恐る恐る聞き返せば今度は大きな声でやらせろ、なんて言うもんだから危うく社会的に殺されるところだったのはついこないだの話。
 そこから、流石に職場でやられるのは考えものだからと家の合鍵を渡せば、なんの警戒もなく訪ねてくるようになったのでそれはそれでと頭を抱えつつ。
 
「今日はどうしたんだ?」

「別に……近くを通りかかったから来ただけだ」

 たまたまとは言え休みの日に来るか、などと思いながら相手の顔を覗き込む。
 ぴっ、と顔を赤くして視線を逸らすあたり、好みをよくわかっていると言うかなんと言うか。まぁ、全部無自覚なのだからたちが悪いのだけれど。

「なんだ、てっきりまたやりに来たのかと思った」

「……悪いかよ」

 ぼそぼそと呟かれ、今日もやりに来たのかと思わず頭を抱える。何をやるのかって?……乳首相撲だよ。

「……」

「……」

 気まずい空気に居心地が悪くなる。まあ、来てしまったんだから仕方がない。覚悟を決め、トレーナーを脱ぐと、両手を開いておいでと誘った。
 あいつも着ていたジャケットを脱ぎ、そのまま腕の中へ飛び込んでくる。なんだよ、可愛いなと思うあたり、もう相当毒されているなんて思いつつ。

「……なんだよ」

「いや、何も?」

 そう言いながら、胸の突起を合わせる。何倍もデカいあいつのそれは感度もばっちりで、擦り合わせるとすぐに芯を持った。
 
「っ……、ぅ!」

 声を出さないようにときっちり閉じられた口から、くぐもった声が漏れる。
 勃ち上がったそれを、こりこり押しつぶすように刺激すれば、彼は両手で口を覆った。胸と胸を合わせ、ポケットにしまってあった小袋のローションを開け隙間に垂らす。
 ニュルニュルと逃げる突起を追いかけ、硬くなったそれで突起を苛めれぱ、感覚が変わったからか身動ぎをした後、腕を掴んできた

「うぅ、んんっ!」

 その声は独特の色気を纏っていた。まさか男相手に勃つ日が来るとは、なんて思いつつ、誤魔化すように突起への責めを継続する。

「はぁっ、……っ、んあっ」

「良さそうじゃん?」

「んぅ、そんなわけ……」

 顔を耳まで赤くしながら目を伏せ耐えている姿に、なんとも言えない感情が湧く。
 自分から誘っておいて、彼はいつもそんな感じだった。快楽に弱いくせにと思いかけて、弱いからこそこんなことになってるんじゃないかと思い直す。

「おら、このままじゃストレート負けだぞ」

「俺はっ……負けねぇっ」

 そう言いながらも、すでに勝敗は着いたも同然だった。
 硬くなった突起を擦り上げれば声を上げ、力が抜けたのかそのままくたりともたれかかってくる。
 それを受け止めながら、近場にあったタオルで胸を拭く。
 ふと、血色の良くなった薄い唇に目がいく。うっすら開かれた口から、息を吸う度ちらちら赤い舌が見えて、思わずキスを落とした。
 
「なっ!」

「……延長戦、するだろ」

 そう言ってあいつを抱きかかえると、そのままベッドへと運び、押し倒す。ここまで来たらもう引くに引けないなんて思いながら、驚いたように目をまん丸にするあいつの耳元で、気持ちよくしてやるよと囁けば、パンチが飛んできたので受け止めた。

「て、てめぇ何しやがるっ!」

「おー?いいのか?負けたままで」

「……ぐっ」

 そう言うと露骨に嫌そうな顔をしたのでわかりやすいなとにやけつつ、唇に啄むようにキスを落とす。
 ぎゅっと目を瞑り、成すがままになっている彼の胸の突起を優しく摘む。すると口の隙間から喘ぎ声が漏れ出た。
 舌を隙間に無理やり差し込み、逃げようとするあいつの舌を絡め取る。一瞬噛まれるかもと思ったがそんなことはなく、大人しく貪られている姿に欲情する。

「っ、ふぁっ……んんっ、うぅ……」

「ちゅっ、はぁ……っ、気持ちいいな」

「はっ、るせっ!言うな……!」

 息も絶え絶えな彼の胸を揉みしだく。男の胸なんて揉んでも楽しくないだろうと思っていたが、これはこれでありかもしれない。筋肉独特の弾力を感じながら、両の突起を摘み上げこりこりと押し潰せば、先程の乳首相撲ですでに出来上がっていた彼は身体を反らして感じ入った。

「あぁっ、!」

 彼は声を上げてしまったのが恥ずかしかったのか、目を潤ませながら手で口を覆ってしまう。そういうのって逆効果なんだけどな、と思い耳たぶに齧りついた。
 そのまま先にイッた方が負けなと囁けば、小動物かなにかのように挙動不審になったので、思わずにやける。

「っ!耳やめろっ!」

「ははっ、気持ちいいからか?」

「う、うるせぇ……っ」

 歯切れ悪く呟く彼に加虐心が煽られる。耳の孔につぽつぽと舌を差し込みながら胸の突起を引っ掻くように苛めれば、びくびくとわかりやすく身体を跳ねさせるので思わず可愛いと囁いた。

「かわいく、ねぇ!はぁっ、んう……っ!」

「可愛いと思うぞ。そうやって強がるところとかな」

「っ!」

 耳元から離れ、胸の突起に舌を這わせる。ひっと引き攣ったような声を上げる彼の、残ったもう片方を弾くように刺激すれば、じたじたと暴れ出した。
 限界が近いのだろう。体重をかけて身体を押さえつけると、余裕がなさそうに高く喘いだ。

「ああっ!やだ、負けたくないぃ……!」 

 声を抑えることすら出来なくなった彼の腕が背中に回される。ぎゅむぎゅむと胸を押し付けられ、じゅっと音を立てて吸い付いた。

「んん〜〜〜〜っ!!」

 はあはあと荒い息が聞こえる。どう見てもイッただろう彼の胸から離れ、頭を撫でてやると手に擦り寄ってきた。
 無意識とは言えそう言うところが目に毒だなと思う。

「ほら、満足したろ?」

「……」

 終わりにしようとしたが、何か言いたげな彼が半身を起こし、腕を掴んできた。暫しの沈黙の後「これで終わりかよ」と呟かれ、思わず押し黙る。人の気も知らないで、なんて思いながら口を開いた。

「これ以上は……戻れないだろ」

「……、お前だったらいい」

「何するのか知ってるのかよ」

「ガキ扱いすんな」

 真剣な目でそう言われ、思わず押し黙る。
 俺は別に、彼のことを嫌ってはいない。そもそも嫌いだったらこんなことしていないし勃ちもしないだろう。腹をくくる時なのかもしれない。

「……抱けよ」

「意味わかっていってるのか?」

「わからねぇほどガキじゃねぇよ」

 ため息を一つ吐く。
 そう言ってのけた彼は微かに震えていた。思わず手を掴み、ぎゅっと抱き寄せる。
 
「エド、お前が好きだ」

「……っ、」

 信じられないなんて言いたげな表情でこちらを見てくる彼の額にキスを落とす。
 だから、抱かせてほしいと耳元で囁けば、目に涙を浮かべながら「ばぁか」とだけ返された。
 それで十分だった。


 お前にならいい、そう言われたのを心の中で噛み締める。
 腕の中の彼を覗き込めば、様子をうかがうように見てきたので可愛いな、と思いながらベッドになるべく優しく押し倒した。
 仰向けに倒れた彼の目尻に浮かぶ涙を舐め取り、そのままキスを落とす。
 緊張からかぎこちなく開かれた口内に舌を侵入させると、歯列をなぞるように刺激してやる。

「んふぅっ、はぁ……っん、うぅ……」
 
 口の端からくぐもった声が漏れる。可愛い、なんて思いながら夢中で貪っていると、胸を叩かれた。

「んんーー!!」

「ちゅ、なんだよ」

「はっ……はっ……息が出来ねぇっ」

 息も絶え絶えな彼の首筋に何度も吸い付き跡を残す。その度ぴくぴくと身体を跳ねさせ反応を示すのが可愛くて、ついもっと乱れて欲しいなんて思った。

「はぁっ、あ……、」

「なあ、本当に良いんだな?」

「良いって言ってんだろ……!」

「はいはい」

 相槌を打ちながら、下着ごとスキニーを下ろす。下着の中で2度精を吐き出させたせいか、ぐしょぐしょに濡れたそれに思わずにやける。
 半勃ちになった陰茎に手を伸ばすと、ゆっくり扱き始めた。

「ああっ、んう!」

「気持ちいいな」

 そう語りかけると彼はこくこくと頷いた。感じ入る顔を至近距離で眺める。
 空いた片手で、ぷっくりと膨らんだ胸の突起を摘めば、大袈裟なくらいびくんと身体を跳ねさせた。

「はあっ!んんっ、……そこっ、すぐイッちゃうからぁ!」

「本当に胸弱いんだな」

「誰のせいだと!あっ、んん!」

「ははは、俺のせいか」

 もう片方を舌先で刺激してやれば、彼はすぐ白濁とした液体を吐き出した。まぁあれだけ触ってれば感度も上がるか、なんて思いつつ、ポケットから使い捨てのローションを取り出すと手に広げる。

「大丈夫か?」

「これくらい、大丈夫だ!」

 体温で温めたローションを指に絡めると、後孔に這わせる。
 大丈夫、と言っている割には不安そうな彼を少しでも落ち着かせてやりたくて、空いている手で頭を撫でた。

「無理すんなよ。大丈夫だ、優しくするから」

「……ん、わかった」

 ゆっくり、時間を掛けて後孔に指を埋めていく。違和感に眉間に皺を寄せる彼にキスを落としつつ、ローションの滑りを借りてなんとか1本挿入れることができた。
 ぎちぎちと締め付けてくる後孔を、焦るなと己に言い聞かせながら時間を掛けて解していく。

「っ、ひぃっ!……なんだ今の、」

 ふと、膨らんだ場所に指が当たって彼が喘いだ。見つけた、ここが彼の良い場所か、とそこを重点的に捏ねる。

「う゛ぅっ?あっ、なにそれ!んあっ、」

「はは、可愛いな」

 状況を理解できてない彼の額にキスを落としながら、膨らんできたそこを刺激しながら出し入れをする。
 
「ああっ、ま゛って!そこばっか!うぅ、」

「ここが気持ちいいの、覚えような」

「う゛あ゛、やだぁっ!ん゛ん゛っ!んあっ!ん~~〜〜!!」

 くぱくぱと音を立てて、拡げるように動かせば彼は反り返り果てた。ぴゅくっと少し薄くなった精液がシーツを汚す。
 
「そろそろもう1本挿入りそうか?」

「はーっ、はーっ……」

 多少柔らかくなったそこに、もう1本指を挿入する。
 ぐぷぐぷと卑猥な音を立てて飲み込まれていく。グリグリとしこりを2本の指で刺激すると、彼がしがみついてきた。

「あ゛あっ!ぐあっ!んん、……あ゛!」

「良さそうだな」

「んん、!はあっ、きもちいっ!あ゛ぁ゛っ!」 

 蕩けた表情で感じ入る彼に、思わず生唾を飲み込む。早く突っ込んでしまいたい気持ちを抑え、出し入れを繰り返した。 

「んん〜〜〜〜っ!♡♡」

 彼が耳元で甘ったるい声で喘ぐ。そのまま後孔の感触を楽しんでいると、彼から唇を重ねてきた。ちゅっと音を立てて吸い付かれ、リミッターが外れかける。

「ちゅ、きす……ほしい」

「ったく、人の気も知らないで」

 そう言われ、思わず唇にしゃぶりついた。おずおずと差し出された舌を絡め取り、貪る。
 さり気なくもう1本指を増やしてみるが、引っかかることなくするすると飲み込まれていった。 
 
「大分柔らかくなったな」

「ふぁっ、もっ……大丈夫だからぁ♡」

「っ、」

 もう、耐えれそうに無かった。ズボンと一緒に下着を脱ぎ、あいつのよく鍛えられた腹に陰茎を乗せる。大きさに驚いたのか目をまん丸にしてこちらを見てくるのか可愛くて、思わずキスを落とす。

「でっか、い」

「そりゃどうも」

「そんなの挿入れられたら……」

 狂っちゃう、と小さく言われてなんとか保っていた理性が千切れた音がした。これ以上はもう待てない。
 両腕を押さえつけ、後孔に押し当てるとゆっくり挿入していく。なんとか切れることなく先端を飲み込むと、きゅうきゅう絡みついてくる肉壁を押し分ける。

「かはっ、ああっ!♡♡」

「はぁ、きっつ……」

「う゛うっ!♡♡んあ……っ!♡♡あ゛あ゛〜〜〜〜っ!♡♡♡」

 彼の陰茎から、ぴゅくっと薄くなった精液が漏れ出る。がりがりと背中に爪が立てられるが、気にしている場合ではない。

「っ、大丈夫か?」

「はーっ♡♡はーっ♡♡だいじょぶ……♡」

 流石に全部は挿入らないが、まあそれは追々楽しむとして。ゆっくり引き抜き、雁首でしこりを押し潰せば、たまらないと言わんばかりにナカをきゅうきゅうと締め付けてきた。

「あ゛あっ!♡♡♡ん゛あっ……♡♡またイクっ♡♡ん~~〜〜っ!!♡♡♡」

 彼は顔を歪め口の端から唾液を垂らし何度目かもわからない絶頂を迎えた。締め付けで危うく暴発しかけたが、奥歯を噛み締めなんとか耐えると律動を始める。

「はぁ、エド……好きだ」

「るーくぅ、っ♡♡んあ゛♡♡おれもすき♡♡♡すきだからぁっ♡♡」

「っ!」

 舌っ足らずに言われ、胸の中が熱くなる。ぎゅっと抱き締めながら奥にマーキングするように精を吐きかけた。
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