感想・雑記
『4D』から見るモブ君たちの超能力
2021/10/09 16:09モブサイコの魅力的な部分はたくさんあります。
各キャラクターの面白さ。
ストーリーの面白さ、ギャグのセンス。
心理描写の巧みさ。
おかっぱの少年と年の離れた大人の男。
学ランとスーツ。
などなど…。
そのなかで主人公モブ君が超能力者ということに焦点を当てて、モブサイコを堪能してみたいと思います。
モブ君は世界一の超能力者です。
鈴木社長が、世界中を回って自分よりも強い超能力者はいなかったと言っています。
その鈴木社長との戦いで互角に戦ったモブ君もまた、世界一の超能力者ということになります。
律が渇望した超能力。
超能力で空を飛んだり、物を動かしたりしてみたいと想像することは、誰もが一度は考えることなんじゃないかと思います。
ではこの超能力とは何なのか?
『4D』を紹介する前に、対極にある小説『ナインストーリーズ』(JDサリンジャー)の「テディ」から考えてみたいと思います。
「テディ」はサリンジャーの小説では珍しい、予知能力や幽体離脱ができる少年が出てきます。
少年の話では、幽体離脱をするには、私たちが持っている論理や概念を捨てることだと言っています。
すべての概念を捨て、この世界をあるがままに見る。そしてすべての物に隔たりがなく、有限ではないことを知れば、この世界から抜け出せると言います。
その話を飛躍させて考えれば、発狂でもして、論理や概念が全くない状態になれば幽体離脱を超えて空を飛べるかもしれません。
けれども、その状態で崖から飛び降りても間違いなく海に落ちると思います。
体を浮かせるには何か物理的な力が加わっていると考えられます。
「テディ」の幽体離脱は、モブ君もやっていたし、エクボは完全に幽体というか霊体そのものです。
それを数学理論、物理学理論で説明したSF漫画が『4D(フォーディー、フォースディメンション)』(ストーリー橘尚毅、絵 汐里)になります。
フォースディメンション、四次元です。
漫画の内容は、超能力者の女子高生と、超能力を全く使えない数学者の先生が超能力の真実に迫り、四次元世界への存在に気付いていくストーリーです。
単行本は4巻しかありませんが(たぶん打ち切りになった)内容はみっちり詰め込まれています。
『4D』に描かれた超能力の正体を、モブ君の超能力と照らし合わせながら考えていきたいと思います。
『4D』のテーマは、四次元です。
四次元とは私たちがいる三次元(縦、横、高さ)にもうひとつ方向が加わった次元です。
平面で生きている二次元の人間が紙の上の方向を認識できないように、私たちももうひとつの方向を認識することはできません。
理論上、四次元をとらえると、四次元は空間が歪み、方向も定まらない不安定な世界になります。
そして『4D』のストーリーは人間がどこから来たのかに迫っていきます。
内容を結論からまとめました。
人間はもともと四次元で生まれ、不安定で過酷な世界で生きてきた。
そこから安定した世界へ移り住むためにひとつ下の三次元に移行した。
四次元で生きていた体は退化して、三次元の体の、目に見えない影のような破片になった。
けれども稀に先祖返りをしたり、四次元の体が大きく、三次元に影響を及ぼす場合がある。
この四次元の体を“バルク”(嵩、体積)と仮称。
超能力とはこのバルクが作用した現象と見る。
という解釈でした。
バルクは三次元の肉体と繋がっています。形は様々で、うねうねした形をしていて、人間の背後に影として存在します。
普通の人間は小さく退化して何の力も持たない感じでした。
そして、超能力者は感情や鍛練によってバルクを操り、物を動かしたり、自分を浮かせたりします。
また、瞬間移動も、空間が歪んだ四次元を通れば可能になります。
ただ、リスクもあって、バルクを使いすぎると体に歪みが生じます。
ちょうど紙に書かれた人間の上で動くと、紙がくしゃくしゃになる感じです。
鍛練したり、トランス状態になると、体の歪みを瞬時に治せます。
もしもモブ君や鈴木社長や5超やテル君、律にバルクがあったら…と考えてみたくなります。
鈴木社長はエネルギーが過度に放出したとき、一時体が歪んでしまいました。
また、“茂夫”は意思を持ったバルクだとしたら、最上さんが言った「キミという器が壊れたことで…中身がそれか」というのは、バルクのことを示していたのかもしれないと思いました。
バルクは通常意思を持たない体の一部器官のような感じで存在します。
けれども、三次元の体や思考がバルクに移ったら、四次元体となって生きることができます。
また、三次元の肉体が死ぬと、バルクは切り離されて宙を漂っていきます。
これが魂だとか幽霊になります。
そうすると、エクボは意思を持ったバルクそのものになり、その存在は四次元体と言うことができます。
エクボは高次元の存在だったんですね。
そして茂夫も意思を持ち、三次元のモブ君を取り込もうとしました。
結局、茂夫はモブ君と和解して、消えたというより、原作のコマの進み方では、三次元のモブ君が現れたという感じでした。
人間は、三次元の肉体に四次元のバルクが繋がり、大きいバルクを持つ者がバルクの力で念動力や瞬間移動、テレパシーなどを使えるようになる。
そう考えると、テル君や鈴木社長にもバルクがあるということになります。
ただ、モブ君のようにバルクが抑圧され、そこからバルクに意思が生まれ、茂夫となったのはモブ君だけなんだろうなと思います。
そんなモブ君が事故に遭い、バルクが暴走してトランス状態になった時、二面性は誰にでもあると言ってバルクを止めた霊幻は本当にすごいと思うのです。
それはモブ君が霊幻に足首を掴まれた時にも、茂夫の言葉で「ダメだ…この人の言葉を聞いたら…僕はせっかく自由になったんだ。」と言っていることからも知ることができます。
茂夫も霊幻を意識しているし、何より茂夫は霊幻に囚われていた印象さえ与えます。
もちろん超能力を起こさせるバルク(茂夫)を抑えていたのは、律を傷付けたトラウマとツボミちゃんの飽きたという言葉からですが、茂夫も霊幻を認識しているあたり、霊幻の存在がいかに大きいかがわかります。
そして最後は意思を持った四次元体のエクボと、四次元体を受け入れて三次元の体に戻ったモブ君と、四次元体を持たない霊幻の三人が歩いていく描写になります。
そう考えるとすごい構図です!
こうして考えると、モブサイコにはあらゆる要素が詰まっていて様々な角度から楽しめる漫画だと思いました。
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各キャラクターの面白さ。
ストーリーの面白さ、ギャグのセンス。
心理描写の巧みさ。
おかっぱの少年と年の離れた大人の男。
学ランとスーツ。
などなど…。
そのなかで主人公モブ君が超能力者ということに焦点を当てて、モブサイコを堪能してみたいと思います。
モブ君は世界一の超能力者です。
鈴木社長が、世界中を回って自分よりも強い超能力者はいなかったと言っています。
その鈴木社長との戦いで互角に戦ったモブ君もまた、世界一の超能力者ということになります。
律が渇望した超能力。
超能力で空を飛んだり、物を動かしたりしてみたいと想像することは、誰もが一度は考えることなんじゃないかと思います。
ではこの超能力とは何なのか?
『4D』を紹介する前に、対極にある小説『ナインストーリーズ』(JDサリンジャー)の「テディ」から考えてみたいと思います。
「テディ」はサリンジャーの小説では珍しい、予知能力や幽体離脱ができる少年が出てきます。
少年の話では、幽体離脱をするには、私たちが持っている論理や概念を捨てることだと言っています。
すべての概念を捨て、この世界をあるがままに見る。そしてすべての物に隔たりがなく、有限ではないことを知れば、この世界から抜け出せると言います。
その話を飛躍させて考えれば、発狂でもして、論理や概念が全くない状態になれば幽体離脱を超えて空を飛べるかもしれません。
けれども、その状態で崖から飛び降りても間違いなく海に落ちると思います。
体を浮かせるには何か物理的な力が加わっていると考えられます。
「テディ」の幽体離脱は、モブ君もやっていたし、エクボは完全に幽体というか霊体そのものです。
それを数学理論、物理学理論で説明したSF漫画が『4D(フォーディー、フォースディメンション)』(ストーリー橘尚毅、絵 汐里)になります。
フォースディメンション、四次元です。
漫画の内容は、超能力者の女子高生と、超能力を全く使えない数学者の先生が超能力の真実に迫り、四次元世界への存在に気付いていくストーリーです。
単行本は4巻しかありませんが(たぶん打ち切りになった)内容はみっちり詰め込まれています。
『4D』に描かれた超能力の正体を、モブ君の超能力と照らし合わせながら考えていきたいと思います。
『4D』のテーマは、四次元です。
四次元とは私たちがいる三次元(縦、横、高さ)にもうひとつ方向が加わった次元です。
平面で生きている二次元の人間が紙の上の方向を認識できないように、私たちももうひとつの方向を認識することはできません。
理論上、四次元をとらえると、四次元は空間が歪み、方向も定まらない不安定な世界になります。
そして『4D』のストーリーは人間がどこから来たのかに迫っていきます。
内容を結論からまとめました。
人間はもともと四次元で生まれ、不安定で過酷な世界で生きてきた。
そこから安定した世界へ移り住むためにひとつ下の三次元に移行した。
四次元で生きていた体は退化して、三次元の体の、目に見えない影のような破片になった。
けれども稀に先祖返りをしたり、四次元の体が大きく、三次元に影響を及ぼす場合がある。
この四次元の体を“バルク”(嵩、体積)と仮称。
超能力とはこのバルクが作用した現象と見る。
という解釈でした。
バルクは三次元の肉体と繋がっています。形は様々で、うねうねした形をしていて、人間の背後に影として存在します。
普通の人間は小さく退化して何の力も持たない感じでした。
そして、超能力者は感情や鍛練によってバルクを操り、物を動かしたり、自分を浮かせたりします。
また、瞬間移動も、空間が歪んだ四次元を通れば可能になります。
ただ、リスクもあって、バルクを使いすぎると体に歪みが生じます。
ちょうど紙に書かれた人間の上で動くと、紙がくしゃくしゃになる感じです。
鍛練したり、トランス状態になると、体の歪みを瞬時に治せます。
もしもモブ君や鈴木社長や5超やテル君、律にバルクがあったら…と考えてみたくなります。
鈴木社長はエネルギーが過度に放出したとき、一時体が歪んでしまいました。
また、“茂夫”は意思を持ったバルクだとしたら、最上さんが言った「キミという器が壊れたことで…中身がそれか」というのは、バルクのことを示していたのかもしれないと思いました。
バルクは通常意思を持たない体の一部器官のような感じで存在します。
けれども、三次元の体や思考がバルクに移ったら、四次元体となって生きることができます。
また、三次元の肉体が死ぬと、バルクは切り離されて宙を漂っていきます。
これが魂だとか幽霊になります。
そうすると、エクボは意思を持ったバルクそのものになり、その存在は四次元体と言うことができます。
エクボは高次元の存在だったんですね。
そして茂夫も意思を持ち、三次元のモブ君を取り込もうとしました。
結局、茂夫はモブ君と和解して、消えたというより、原作のコマの進み方では、三次元のモブ君が現れたという感じでした。
人間は、三次元の肉体に四次元のバルクが繋がり、大きいバルクを持つ者がバルクの力で念動力や瞬間移動、テレパシーなどを使えるようになる。
そう考えると、テル君や鈴木社長にもバルクがあるということになります。
ただ、モブ君のようにバルクが抑圧され、そこからバルクに意思が生まれ、茂夫となったのはモブ君だけなんだろうなと思います。
そんなモブ君が事故に遭い、バルクが暴走してトランス状態になった時、二面性は誰にでもあると言ってバルクを止めた霊幻は本当にすごいと思うのです。
それはモブ君が霊幻に足首を掴まれた時にも、茂夫の言葉で「ダメだ…この人の言葉を聞いたら…僕はせっかく自由になったんだ。」と言っていることからも知ることができます。
茂夫も霊幻を意識しているし、何より茂夫は霊幻に囚われていた印象さえ与えます。
もちろん超能力を起こさせるバルク(茂夫)を抑えていたのは、律を傷付けたトラウマとツボミちゃんの飽きたという言葉からですが、茂夫も霊幻を認識しているあたり、霊幻の存在がいかに大きいかがわかります。
そして最後は意思を持った四次元体のエクボと、四次元体を受け入れて三次元の体に戻ったモブ君と、四次元体を持たない霊幻の三人が歩いていく描写になります。
そう考えるとすごい構図です!
こうして考えると、モブサイコにはあらゆる要素が詰まっていて様々な角度から楽しめる漫画だと思いました。
##IMGR63##