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「買いすぎちゃったかなあ」
ここはバチカル。
倒したヴァンが生きていると聞きつけた私たちは旅支度をしていた。
「俺が持つよ」
「えっ」
返事を待たず、さりげなく私の腕から荷物を取ったこの男はガイ・セシル。
何度もバチカルに来たとはいえ王都なのでとても広い。
マルクト帝国軍の一兵士である私が地理を覚えられるはずもなく、案内役に彼が任命されたのだ。
「ごめんね」
「?これくらい軽いもんさ」
「そのことじゃなくて…あ、いや、それもだけど!ガイも久々のバチカルだし1人で回りたかったんじゃないかなって」
「あぁ、それなら大丈夫だ。グランコクマに居た間に荷物を運んだりでたまに来てたからな」
知らなかった。
たまたま、大佐に仕えていた流れでこうやって旅をしていたわけだが私は軍の下っ端に近い兵士だ。
ヴァンを倒した後は伯爵であるガイと合う機会もあまりなかった。
数回、大佐に呼び出されてピオニー陛下のとこに向かった時くらいだろうか、ガイの顔を見たのは。
「名前は何してたんだ?」
「ずっと大佐の雑用ばっかしてた気がする」
「はは、俺もブウサギの散歩ばっかしてた気がするよ」
ガイが荷物を持ってない方の手で頭を搔く。
「あ、そう言えばグランコクマにさ、新しいカフェができてて美味しいらしいよ」
「へぇー!知らなかったな。そういう話って意外と回ってこないもんだな」
「そうなの?カレーとかパフェとか、ガイの好きなお魚が美味しい店もあるよ!」
「よく知ってるんだな。今度グランコクマに帰ったら一緒に行こう」
最後の一言にまた出た!と私は苦笑した。
「そうやって、思わせぶりなこと言って…」
ガイと目が合って言葉が詰まる。
自分で自惚れてしまいそうになるくらい優しい目をしていて、急に頬が熱くなる。
それに、
「ガ、ガイってさ」
「ん?」
「女性恐怖症治ったの?」
「どうして?」
「き、距離が…」
近い、とても近い。
話に夢中になって気づいてなかったが、私が少しよろめいたらぶつかってしまいそうな距離だ。
そもそもだ、最初に私の荷物を持ってくれていた時点で気づくべきだったのだ。
昔のガイだったら1度荷物を置いてから渡すというワンクッションが必要だったはずだ。
「あぁ、悪い。近かったか?話に夢中にだったからさ」
と少し距離を開けたが、それでもまだ近い。
前は人一人分だったのが今はミュウ1匹分(耳除く)になっている。
「この1ヶ月で何かあったの?」
「何も無かったから、かな」
眉を下げながら笑うガイに答えになってないんだけどとぶつくさ言ってしばらく歩けばまた距離は元通り。
ミュウも入れないほど近くなる。
その距離に早鐘を打つ私の心臓。
そんな私を彼はまた優しい顔で見ているのだった。
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