眩しい空の夢




「へぇ~、そうなんだ。とりあえずその ████ って呼ぶのやめてくれない?みみちゃんって呼んで、可愛いから。」

私がジュルジュルと桃を吸い上げながら言い放つと、真夏は大笑いをしてひぃと息をするように言う。

「ふっ、これを話してそんな反応されたのは初めてです、みみちゃんってすごく肝が座っているんですね、あははっ、面白い子だ。」

そうかな、私はそうは思わないけれど。変な人。

「水無月!行き先を変えて、いつもの美容院に行ってくれないですか?」

真夏がそう前に向かって叫ぶと、前から
「了解ですー」と言う答えが返ってきた。

車の中で真夏と会話しながら【びよおいん】という所に向かう。びよおいんって病院じゃないよね…?と真夏に質問したら、髪を綺麗にしてくれる所だよ、と答えた。ちょっと安心。
今までどうやって暮らしてきたのかとか親の事とかよく聞かれてきた事を淡々と答えていると、【びよおいん】に着いたようで停車する。

そこからは小綺麗な所に連れて行かれ、知らない人に頭を洗われて髪を切られた。何だか久しぶりに前が見えるようになった気がする。
日本人の基本的な髪色とは違うであろう私の薄い桃色の髪の毛は顔も覚えていない人間にざく切りに切られていたのに、綺麗な【ボブ】というものになっていた。前髪も適当に可愛くなった気がする。
昔から髪の毛の色が思った通りに変えられるな、とは思っていたけれどこれが真夏の言っていた「特異な能力」なのだろうか。

ばさあっと巻き付けられていた銀色の幕が剥がされて椅子から降り、真夏の所へ向かう。
真夏は「おーっ、可愛くなりましたね!凄い可愛い」と言っていた。
絶対この髪型真夏の性癖だと思う。

真夏が会計を済ませたらまた二人で車に乗り込んで学園へと向かう。



「学園はね、普通の人が敷地内に入れないように作ってあるんですよ。僕の能力で隠しているんです。」

もしかしたら真夏って結構すごい人なのかもしれないなーと思いながら、何杯目か分からない桃ジュースを啜る。今日は暑いからか一段と喉が渇く。

桃ジュースでお腹いっぱいになった私は段々眠くなってきて、真夏の膝の上に頭を乗せて寝転がった。
「みみちゃんは猫みたいですね。」
真夏の名前らしからぬ冷え冷えの手で頭を撫でられ続けた私は、体感数秒で眠りについた。



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