憂鬱への扉
「あ〜っ!!これがみみちゃんさまですかぁ〜!
かぁ〜わぁいぃ〜い〜っ♡♡めっちゃ美少女〜!お人形さんみたぁい〜♡♡」
切り替えが早いのは彼女の長所でもあります。
文月はすぐにニコニコとしながらみみちゃんに近付いて撫でくり回し始めました。
みみちゃんは文月は平気みたいで、ぬいぐるみみたいになっています。
やっぱり『女性』が苦手なんでしょうか?
僕がそれを微笑ましく眺めていると、文月はみみちゃんに口付けをしました。
……ん?
「はぁ...はぁ...んっ....はぁ……。」
くちゅくちゅと音を立ててキスをしながら文月はみみちゃんの上に覆いかぶさっています。
止めなきゃ、と思い僕が近付くと
みみちゃんは文月を押し倒し返してもっと激しいキスを始めました。
文月は身体をピクピクとさせて「ん゛〜 ♡♡」と甘い声を奏でています。僕が呆然としているのをいい事にみみちゃんは文月にキスしながら足を絡め、頬を撫でています。
まさかこんな展開になるかと思っていなかった僕は、正直困惑です。
「ん...っ……ぷはぁ.....キスするの久しぶり…美味しい…♡」
これじゃあみみちゃんが襲ってるみたいじゃないですか……。
文月案件なら僕より適任がいるので、能力を使い長月に直接僕の声を届けました。
【忙しいところすみません、できれば急いで来て欲しいです、文月がまた…やってます】
呼んだ30秒後くらいに緊急事態と察して長月が駆け付けてきました、流石ですね。
「...真夏様ぁ〜!……はぁっ、はぁ...どうしたんですかぁ...?」
「長月、忙しいのにお呼びしてすみません。文月がまた始めてしまい…。」
焦げ茶色の髪をポニーテールにしてオレンジ色のエプロンを身につけているいつもの出で立ちの長月を見ると心底ほっとします。
長月はあらあら〜と言いながら、上に乗っかっているみみちゃんを抱きあげて文月の上からどかすと、口の周りが涎だらけのみみちゃんは固まってしまいました。
長月がみみちゃんを下に降ろしてあげるとすぐに僕の後ろに隠れます。さっきとえらい違いで思わず笑みが溢れそうになりました。