眩しい空の夢
バタバタと暴れる私は、真夏が腰の手を離した瞬間に床へ落ちて対角に離れた。
「大丈夫ですか…?怪我、してません?」
「近付かないで!!!!
ちょっとは…良い人だと思ったのに…何で期待させるような事、する!?犯したきゃ犯せばいい!もう痛いのは嫌だ!!」
ボタボタと涙を零して、ヒステリックに叫ぶ。
こんなのは私じゃない。まるで私の母親みたいで、大嫌いな私だった。嘘つき、期待した私が悪いのに、馬鹿みたい、死にたい、そんな考えがぐるぐると頭を巡る。
「落ち着いてください、もう大丈夫ですから。」
いつの間にか真夏は私の目の前にいて、
「大丈夫、怯えなくていいんです。
痛かったですね、怖かったですよね、よく頑張りました。」
震えている私の事を抱きしめていた。
「ひっく…うっ…」
「みみちゃんは良い子ですよ。とっても良い子。
よしよし、偉いですね。きちんと約束できましたもんね。お利口さんです。」
真夏はそう言って、私の頭を優しく撫でる。
私の心に付け入ろうとして、薄っぺらい言葉を吐いてるに過ぎないんだ。
絶対こんなの、嘘なんだ。騙されてやるもんか。
私の事を心から褒めてくれる人なんてこの世界にいるわけが無い、バカみたい。
「怖いんですよね…人を信じるのが。良く分かります。傷付きたく、ないですもんね。」
「ふぇ…怖くなん…怖くなんてっ、ないもん…。」
真夏は私を掬い上げるように抱き上げるとソファへと運び、膝の上に座らせてぎうと私を抱きしめた。
「ゆっくりでいいんです…。ゆっくり、信じられるようになりましょう?ゆっくり誰かを信じられるように、ね?
大丈夫。今日は頑張りましたから、たくさん褒めさせてください。信じなくてもいいんです、僕が褒めたいだけなので。」
「ひう…うー…ふぇぇ……」
私はショートパンツがずり下がった無様な姿のまま、真夏のスーツにしがみついて撫でられていた。
「きちんとお約束できて、偉かったですね。お話もちゃんと理解できて、いい子でしたね。
よしよし、よく頑張りましたね。」
「うぅっ…知ってるし……何なのぉっ…。」
「ふふっ、可愛いですね。明日は入学式なので、今日は僕とご飯を食べてからみみちゃんのお部屋でゆっくりねんねしましょうね。寂しい時はいつでも呼んでいいですからね。」
あまりにも子供扱いをされるので、私の顔は耳たぶまで熱くなった。恥ずかしい、何この羞恥ぷれい。
「寂しい時なんてないから、子供扱いしないで。」
わたしがぷいっと顔を背けると、真夏はまた優しく頭を撫でて「そうですね」と言った。