12.恩
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ナオ「……で、結局ガソリンは?」
カズエ「うん、やっぱり買えなかった」
ナオ「え……?」
宍戸「マジかよ……」
後方でペンライトを枝に見立てて回してる忍足と芥川を無視して深刻そうに話す3人。ガソリンが買えないという事実に唖然とその場に立ち尽くす。
ナオ「22時を超えた……ウチらの朝4時には向こうも出発する。何とかせんとこのままじゃ……っ」
宍戸「忍足ー!ガソリンどれくらいあるかわかるか?」
忍足「もって隣の国くらいちゃう?」
宍戸「隣の……」
ナオ「なんで忍足は余裕そうなんじゃ……!」
忍足「あぁ、大丈夫やと思うで。今はガソリンないけど」
ナオ「え……?」
12.恩
アレク「やつら今頃ガソリンが買えなくて困っているだろうな」
スミス「アラブ首長国連邦とは直接取引のないドイツに逃げるなんてびっくりはしたが……さすが須王家の執事と言ったところだ」
一ノ瀬「貸しだ。俺は明日に備えて寝る」
アレク「……あぁ」
スミス「一緒に逃げようとしていた人間の動きとは思えないな」
アレク「エリカは執事をも疑っていたって事か?」
スミス「……どうだろうな」
エリカ「……和樹さんね、おそらく」
ベッドの上で身体を起こし、んー、と背伸びをすると、バスローブがはだけると忍足と宍戸は目を背けた。横にいる跡部がすかさず服を整えるとエリカは不思議そうに隣の人物を見ている。
エリカ「(私景吾と……)ま、いっか」
カズエ「よくないよね!?婚約中の身だから!何もしてないよね!?」
跡部「アーン?ハグはセーフなんだろ?」
カズエとジローもしてるじゃねぇかと言われれば何も言えない。
カズエ「(今はできんし……なんでか知らんけど!!)」
ナオ「それで和樹さんのせいって?」
エリカ「彼は執事になる為にここに来たって言っていたわ」
ナオ「イギリス行ったりドイツ行ったり大変じゃな」
忍足「……もう目開けていいか?」
エリカ「?いいけど?」
ナオ「ダメ!」
早く着替えて来て!と促され洗面所へと押し込まれたエリカは髪の毛どうしよう、と鏡の前で困惑していた。
エリカ「(一つ結びでいいか……)」
いそいそと準備していると外が騒がしくなりワンピースを着ると急いで部屋に戻る。バリバリ……とジェット機の音に目を丸くした。
エリカ「景吾……」
夜中の2時に何事である。不安になったエリカは跡部のバスローブの袖を掴むと、反対の腕で隠すようにギュッと抱きしめてくれる。
ナオ「もしかしてもう来たの…!?ウチ……」
ナオの手を握る宍戸の手にも力が入る。
芥川「カズエちゃん」
カズエ「じ、ジロー、その……」
芥川「俺は離れないよ」
バックハグする芥川を静かに受け入れたカズエ。
忍足はマユミの眠っているベッドに腰を落とすと小さく来たか、と呟いた。
忍足「俺が見てくるわ」
マユミの頭を撫でて、向かう先は……
ナオ「う、ウチも行こうか!?」
宍戸「ナオ」
窓から見えないよう上から覆いしゃがみ込む2人。今にも泣き出しそうなナオを抱き寄せた。
カズエ「ジロー苦しいよ。大丈夫だから」
芥川「………」
窓を覗くとヘリが降りてくるところで忍足の姿もあった。やがて渦中の人物が降りてくる。ごくり、と緊張が走りエリカは跡部のバスローブを強く握った。
「中宮カズエ!!あなた何やってるのよ!!」
「「え……?」」
外から聞こえた声にエリカとナオはフリーズ。知っていたカズエはポリポリと頭をかいた。
カズエ「大きい声でフルネーム呼ぶなっての」
ナオ「あ、あー!!」
忍足「元気そうやん。椿ちゃん」
ナオ「綾小路椿ー!!?」
マユミ「……」
眠っているマユミもピクリと反応したが、コロンと寝返りをうって再び眠りについた。
椿はジェット機を降り、伸びた髪を払いホテルへと歩いてくる。エリカの耳元へ顔を寄せた跡部は着替えてくるとその場を去った。
綾小路「一体何をしているのよ中宮カズエ!」
カズエ「だから何なのそのセリフ……」
決まっているじゃない!と息巻く彼女とはしおらしく別れたはずだ。久々の再会に首を傾げていると彼女はさらに眉間に皺を寄せ始めた。余程ご立腹らしい。
カズエ「うち、別に何も……」
綾小路「榊様はどうしたのよ!?」
カズエ「……へ?」
忍足「椿ちゃんガソリンありがとう」
綾小路「聞いてないわよ婚約者がいるなんて!よりによって榊様じゃなく一般人!!」
宍戸「(世界的ハリウッドスターを一般人呼ばわりかよ……)」
忍足「自分、何に怒ってるんや……」
ナオ「榊って監督の事だよね?」
跡部「あぁ」
綾小路「榊様がいながら他人にうつつを抜かすなんて……見損ないましたよ中宮カズエ!!」
シーンと静まり返る一同。
綾小路が一体何に怒っているのか、わかりそうでわからない、いやわかりたくないというのが本音だろうか。カズエは恐る恐る口を開いた。
カズエ
「あんた……榊監督が好き、とか?」
綾小路「っはう!?」
エリカ「好きなの?」
カズエ「好きなんだ」
ナオ「好きなんじゃな」
フルフルと真っ赤になっていく女の子を見ながら、沸々と湧き上がる何かが芽生えた3人。
綾小路「そそそんな事はいいのよ中宮カズエ!」
カズエ「フルネームのくだりはツッコまなくてもい?」
いいよーと2人が答える。
ガシッとカズエの肩を掴むと深呼吸して問いかける。
綾小路「榊様の事が好きなんでしょう?」
カズエ「1ミリもそう思ってない」
宍戸「コントかよ」
忍足「大体なんでそう思ったんや?」
綾小路「だって中宮カズエと、榊様が……ほ、抱擁していたから」
カズエ「……ん?」
突然発せられた言葉に、今度はこちらが動揺する。
芥川「抱擁?」
忍足「今まさしくジローがやってるやつな」
カズエ「ジロー放せって!」
芥川「カズエちゃん説明して」
カズエ「説明って言ったって……」
そんなのしたっけ?と思い当たりがないようで、キリキリとお腹の締め付けが強くなっていく。
眠たい、と横に揺れ始めたエリカを片手で支えた跡部は自身に引き寄せた。
綾小路「音楽室の前で抱擁していたわ!」
ナオ「え、カズエ!?ちょっと詳しく……」
私が帰る前日よ!と日時までわかったもんだから戸惑う友人達
カズエ「……あ、それって」
忍足「思い当たりあるん?」
マユミが目を開け、状況を飲み込めないでいると忍足が大丈夫やでと優しく声をかけた。
カズエ「新作ゲームがねっ、すっごい面白かったから!」
あ!と声を上げたのは意外な人物で
宍戸「岳人と夜中まで遊んでたって言ってた日か」
カズエ「そー!それで眠くてあんな風に!」
指を指すカズエの先にはウトウトしているエリカとそれを支える跡部の姿が。
カズエ「音楽室でピアノ聴いてたら眠くて眠くて……」
綾小路「…………」
宍戸「まぁ一度だけだもんな。監督とカズエのベストカップルってよ」
カズエ「……うちのせいか!」
あはは!と楽しそうに笑うカズエは謎が解けた〜とスッキリしたようだ。
マユミ「(何の話をしてるんだろう?ベストカップル……?)」
芥川「好きなら後悔しない方がいいよ?」
綾小路「わ……わたしは別に……」
忍足「せやな。まぁ頑張れや」
綾小路「〜っ!そ、それよりっあなた達これからどうするの?私は……」
ナオ「?」
綾小路「私には何ができる……?」
マユミ「椿ちゃん……?」
ガソリンを持ってきてくれたと聞き状況を把握すると、椿の目の前まで歩み寄った。
マユミ「十分だよっ、ありがとう」
綾小路「っ、忍足侑士!絶対にマユミちゃんを逃してちょうだいね!」
忍足「そのつもりや」
アレク「出発の準備はできてるか?」
スミス「あぁ」
ウィリアム「それにしても意外だったな、きっちり時間を守るなんて」
アレク「失格になったら手に入らねえからな」
スミス「無理矢理YESと言わせる事だってできたはずでは?日本の未来もかかってる事は彼女もわかってると思いますけど」
アレク「それじゃ、意味ねーんだよ。俺は愛のない結婚はしたくねえ」
ウィリアム「夫人は1人ではないようだが……?」
アレク「あぁ。形だけだ。けど俺はエリカを一目みて今まで出会った女とは違うと確信している」
スミス「そうか。俺もマユミと向き合う時間が欲しい。再会したらゆっくりとお互いを知っていくつもりだ」
ウィリアム「僕もカズエちゃんに愛してると言われたいな」
スミス「お前も一目惚れってやつか」
ウィリアム「あの照れ屋な所も愛らしいよね。彼女が出迎えてくれる日々はなんて幸せなんだろう」
スミス「あの執事も用意はできたようだな」
ウィリアム「アレク、行き先は?」
アレク「ーーーー」
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ナオ「時間きたよ」
マユミ「……うん。だからマユミ達も」
カズエ「アデュードイツ!」
エリカ「また来たいなぁ」
宍戸「エリカは緊張感とかないのかよ……」
エリカ「ふふふ、みんながいるから平気よ」
忍足「せやな。俺らに任しとき……と言いたいけど」
前に座っている跡部とマユミに再び視線が集まる。
マユミ「うん、大丈夫だよ」
カズエ「マユミに任せとけば心配いらないって」
エリカ「そうね」
ナオ「みんな!ナオちゃん特製サンドイッチの完成じゃ」
芥川「ナオちゃんありがとう」
マユミ「侑士くん、今の間に眠っててね!昨日は遅くまでありがとうっ」
忍足「マユミの有志を目に焼き付けんねん」
マユミ「は、恥ずかしいよ……」
カズエ「じゃあこれパス!うちは寝るから」
忍足「これなんや……発信機?」
カズエ「アレク王子の」
忍足「なんやて!?自分えらいもん作ったな……」
この中で解読できそうだから!発信機はエリカの指示……そう言い残してスヤスヤと寝息を立てるカズエ
ナオ「失礼な!うちだって地図見れるし!」
マユミ「マユミも見るよ?」
そう言いながら跡部の補助をこなすマユミに一同が頼もしすぎると心震えている中、エリカが機械を覗き込む。
エリカ「点滅が動いてるよ?」
「「!?」」
To be continued......
2026.03.06
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