インターン編
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ルミリオンのマントが巻き上げられていた。
その時、少女はー……
50.救われる人の力
意識して掴んだわけではなかった
「痛くて辛くて苦しんでる女の子を
包んであげる為だ!」
自分を救わんと傷ついていく姿が辛かった。
もう…いいのに…!!
死んでほしくないのに…!!
この人たちは死んでも諦めないーー
エリカ「エリちゃん……!」
通形ミリオから紡がれ
エリカの行動が彼女を闇から引っ張り上げようとしていた今、彼女に今"救われる覚悟"が芽生えた
緑谷「もう、離さないよ」
治崎「返せ!!」
エリカ「返さない!!」
緑谷「うわっ」
無数の棘が3人を襲う。
空中では身動きがとれないと頭をよぎる出久をエリカは後ろから支え、背後へと跳んだ。
その際、出久は咄嗟に出してしまったのだ。
ワンフォーオール……100%を
緑谷「(体が熱い…いや冷たい。僕は100%を出していたなのに!)怪我も治ってる…!」
エリカ「……いっちゃん?」
緑谷「……君の…力なの…?」
エリ「っ……」
すると突然蹲る出久に慌てるエリカ
治崎「力を制御出来ていないんだ。拍子で発動できたものの止め方がわからないんだろう壊理!」
目の前に現れたモノ、コンクリートで出来た……
エリカ「ドラゴン……?」
治崎「人間を巻き戻す。それが壊理だ。呪われてるんだよそいうの"個性"は。俺に渡せ分解するしか止める術はない!」
エリカ「絶対」
緑谷「やだ」
ギュっとミリオのマントで背中にエリを結びつける出久は戦闘態勢だ。ストン、と地面に降りたエリカは無重力が解けて自身の体重が足に伝わり、地面を蹴った。
『ズドォーン!』
出久は目の前で砕けるドラゴンに驚いて目を開いた。
緑谷「エリカちゃん…、すご。今の何!?」
エリカ「ドラゴンの形のままだと強そうだなと思って!ちょっとこれでぶっ壊しました!」
あはは!と笑うエリカとは対照的にダメージを負った治崎は顔をしかめた。
エリカ「それより、エリちゃんの個性……」
緑谷「うん、エリちゃん、足が折れた瞬間に…痛みよりも早く…折れる前に戻してくれたんだね…。」
エリカ「チビエリちゃん、すごーい」
緑谷「とっても優しい個性じゃないか」
エリの目に涙が溢れた。
この空の下、自分を守るため腕と足から血を流すエリカと、自分をマントで包み込んで背負ってくれる緑谷。2人はお互いを理解し合っているようだった。
緑谷「僕に考えがある。エリちゃんの個性を体感した感じで…わかった…!体が…戻り続けるスピード…!じゃあ、それ以上のスピードで常に大怪我をし続けていたら!」
エリカ「めっちゃ危険やけど……言われてるもんねぇ。毎日毎日、更に向こうへって」
不釣り合いの笑みを浮かべる2人は起き上がる治崎を見ながら、ぐっと身を低く構える。
緑谷「エリカさん、エリちゃん…、力を貸してくれるかい」
エリ「えっ…」
エリカ「もちろん!いざとなったらお空見えたしエリちゃん抱えて飛ぶから!」
治崎「大局を見らんお前らにはわからんだろうな。壊理の力は、個性因子を消滅させ人間を正常に戻す力だ…!個性で成り立つこの世界を!理を壊すほどの力が…壊理だ!!」
ドラゴン姿を構成する巨大なコンクリートの塊が鋭くなり四方からエリカ達を襲ってくる。
治崎「価値もわからんガキに、利用できる代物じゃない!!」
エリカ「デクっ!」
出久が治崎を蹴り上げ、治崎は上空に放り投げられた。
治崎「どいつもこいつも大局を見ようとしない!!俺が崩すのはこの世界!!その構造そのものだ!!目の前の小さな正義だけの…感情論だけのヒーローきどりが…俺の邪魔をするな!!」
一際大きなコンクリートの腕が出久とエリに向かうが、出久はその攻撃を避けるよりも次の手を考えていた。
エリカ「ヒーロー気取りじゃない…!私もヒーローになるの!!」
エリカの拳がコンクリートで成型された治崎の巨大な腕を真っ二つにする。出久は信じていた。エリカがこの攻撃を防ぐことを。そして、治崎がエリカの攻撃を受け、分解して回復する瞬間を狙っていた。
一気に後ろに回り込むと、100%フルカウルで頭上から攻撃を連打し
緑谷「目の前の…小さな女の子1人救えないで…皆を救けるヒーローになれるかよ!!」
『ドガァァアン!!!』
エリカ「行けっ!デクー!!!」
治崎が分解、修復するよりも早く。
二度と修復する暇など与えぬよう、一気に畳み掛ける。街全体に響くほどの攻撃の連打。
緑谷「あああああッ!!!」
そして、出久は渾身の力を込めて治崎を地面に叩きつけた。
エリカ「やった…!?」
緑谷とエリが地面に着陸し、治崎が息を失ってぐったりしているのを確認し上空で拳を握った。
が、もう瀕死のはずなのに、治崎の巨大な腕が緑谷達に向かっていて、慌てて瞬間移動をする。
エリカ「私が……守るっ」
しかし、その巨大な手は緑谷より前に出たエリカに触れるよりも先に消滅した。
エリカ「よかった……。あ、あれ!?いっちゃん!?」
エリちゃんの力が強まっているのか。巻き戻しと言っていた。エリカはどうしよう、と出久の顔を覗き込む。時同じくしてリューキュウがけが人を連れて地上に出てきた。
リューキュウ「状況は!?」
麗日「ナイトアイは後方にいます!周辺住人には避難を呼びかけました。治崎はデクくんとアイリスが、けど!デクくんの様子がおかしい!」
エリカ「ヤバイ…!エリちゃんの力が増してる!!いっちゃんも耐えられない!どうしよ……」
エリカはパニックだった。きっと今の自分が2人できる事……ぶん殴ってエリちゃんを気絶させる?今まで散々痛い目にあったエリちゃんにそんな事は出来ない!でも目の前のいっちゃんが……!
どうしよう、と自分の怪我や痛みも忘れて泣きそうに顔を歪め、そして、彼女は叫んだ。
エリカ「先生ーー!!」
相澤がエリカの叫びに応えるように指先を少し動かしたことで蛙吹が察し、体を起こす。
相澤「(すまん、緑谷、小桜!)」
エリの個性発動を抹消し、巻き戻しが止まった。
エリカ「あ…よかっ、た…、」
先生が消してくれた……エリカは泣きそうに顔を歪めると、全てが終わったことを察し、崩れるように地面に倒れこんだ。
麗日「エリカ…!うわ、腕と足からめっちゃ血が……!!」
エリカ「あー……お茶子……眠ー……ぃ」
手放しで喜べる状況ではないが、エリを救えた。
みんなの望みが叶った。それだけでエリカはホッとし、お茶子に支えられながら意識を手放した。
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エリカ「…………あれ」
目が覚めると見慣れない天井に少し懐かしい独特の匂い……。
「目、冷めたか」
エリカ「あ、先生」
どうやら眠っていたようで、病院のベッドから体を起こすとイテテテと顔をしかめた。よく見ると手足には包帯が巻かれており、血が足りなくて輸血寸前だったそうだ。あの棘痛かったなぁと思い出す。
エリカ「みんなは?」
相澤「そうだな。順を追って話す。切島は全身打撲に裂傷が酷いが命に別状はない。天喰も顔面にヒビが入ったものの、後に遺るようなモノではないとのこと。ファットガムは骨折が何箇所か。ロックロックも幸い内臓を避ける形で刃が刺さっていた。大事には至らない傷だ」
エリカ「よかった……」
相澤「エリちゃんは個性を止めた後から高熱を出して、まだ熱が引かず眠ったまま今は隔離されている。そして、サー・ナイトアイは…オールマイトやサイドキック、緑谷、通形に囲まれたまま息を引き取った」
エリカ「えっ……」
通形ミリオが言っていた。
「インターンにおいて我々はお客ではなく一人のサイドキック!それはとても恐ろしいよ。時には人の死にも立ち会う…!」
「けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の"経験"」
エリカ「…………」
確かにこれは学校では決して味わう事のできない"経験"けれど……サーが殉職し、尊敬する先輩は個性を無くした……
今はまだすんなりと割り切れない。
どうしても私がもう少し力があればと思わずにはいられない。
悔しくて、胸が痛くて
それでもエリちゃんは救えたのがまだ救いだった。
エリカ「私、結局最後に先生を頼ってしまった。強くなりたいです。もっと……」
相澤は玄野の個性で思うように体が動かない中、聞こえたのだ。助けて!と言うエリカの声が
相澤「お前は十分良くやった。俺の方こそ見ておくと言ったのにすまない」
エリカ「そんな……」
相澤「それはそうと、ずっと名前呼んでたぞ。爆豪の」
エリカ「…………」
エリカの頭の上にぽん、と手を置くとドアの前へと移動した。
エリカ「みんなどこに…?」
相澤「緑谷、切島、麗日、蛙吹は調査や手続きをしている。お前はいつ目覚めるかわからなかったから、別行動になった。ちなみにさっきので調査と手続きは終了だから、お前の体調が万全であれば夜には帰れる。あとは俺がやっておく」
エリカ「ありがとう、ございます」
パタンとドアが閉まるとギュっと布団を握りしめて空を見た。
エリカ「かっちゃん、見ててくれたかなぁ」
飛んで行こうか?なんてこんなボロボロになった自分では正確に飛べないだろうなと苦笑いして再び眠りについた。
To be continued......
2019.09.15