66.前夜
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恵利華「………」
いつもなら車内で今日の練習はどうだとか、部員の事を嬉しそうに話す横顔とは裏腹に、どこか憂いを帯びた表情で外を眺める彼。
緊張、しているわけではない。
プレッシャー……とかでもない。
ただただ今日の試合を頭で繰り返しプレイしているんだと思う。
車が止まると毎回スマートにエスコートしてくれるんだけど、エスコートはそこそこにどこかへ向かう彼に着いて行く。
この屋敷に来るのはもう10回を越えたかな?少しずつ把握して景吾くんの部屋は覚えたけれど、この方向って??
何があったかしらと考える間もなく扉が開いて、大きな水しぶきに目を丸くする。
あ、プール……
水面に浮かび、空を見上げる景吾くんを私は気持ち良さそうだなと眺めていたけれど、ミカエルさんは慌てふためいていた。
恵利華「(同調、したいな)」
『ザバーン』
「お嬢様!!?」
私まで飛び込んだものだから、ミカエルさんはその場を行ったり来たりしていて可笑しくて笑ってしまった。
反対に景吾くんの顔は驚いていた。
お邪魔だったかな?でも伝えたい事がある
恵利華「明日……私も一緒にいるから」
跡部「恵利華……そうだな」
恵利華「??」
不思議そうに覗き込むと、その視線は顔より下にあって……
ミカエル、と景吾くんが呼ぶと
着替えをお持ちしますと席を外した。
跡部「ったく……これで誘ってねーんだからな」
頭を抱える景吾くん。
たまにシャワーのお誘いしてくるのに、顔を真っ赤にしてるのが可笑しくってまた笑ってしまった。
跡部「何笑ってやがる」
ほら、と差し出された手を掴むとグイッと引き寄せられた。
恵利華「温かい……」
跡部「恵利華は柔らかいな」
恵利華「も、もう!」
きっ!と睨むけど、彼は余裕の顔で笑っていて……
夏の日差しのせいかな?眩しく感じるのは。
肌寒いのが温かくなっていく
跡部「………」
容姿端麗、成績も良く、スポーツもでき、家柄も引けをとらねぇ。
横を歩かせてもここまでピッタリと、しっくりとハマる女はそういない。
恵利華「ミカエルさん、遅いね?」
跡部「優勝したら、1日空けとけよ」
恵利華「フライフィッシングよね?楽しみ」
おまけに趣味まで合うんだから、もう運命としか思えねぇ。
跡部「朝はな」
恵利華「?お昼は?」
跡部「別荘にでも行くか」
家族に紹介したいなんて言うと、どんな顔するんだろうな。
恵利華「みんなで?」
跡部「あん?2人で行くに決まってるじゃねーか」
この会話じゃ奇しくも俺の方が多少気持ちが大きい事は否めないがな。
恵利華「テニスコートはあるかしら?」
跡部「………」
跡部「温泉もあるぜ?」
恵利華「わぁ、素敵」
跡部「男女分かれてはいないがな」
言い放つと予想もしない言葉が返ってきた。
恵利華「見られてもいいけど……世界を獲ったらって約束したし……」
跡部「は?」
今、何て言った?
見られてもいい?
恵利華「あ、ミカエルさん」
予想外の言葉に戸惑う俺の腕からスルリと抜け出して、ミカエルの元へと駆け寄った。
「申し訳ございません。恵利華お嬢様がお召しになる服がないようでしてこれを用意しました。」
恵利華「これは……」
視線を這わすと、それはいつかと用意していた恵利華の服。
ミカエルと目が合い、このタイミングで渡した意味を理解する。
跡部「ちょうどいい、それを着て付き合え」
プールを出てシャワーに案内すると、俺も準備をすべく自室に向かう。
跡部「お手をどうぞ、お嬢さん」