向日「なぁ、真由美は前ダブルス組んでたんだよな？」


真由美「そうだよ？」


向日「ダブルスとシングルス、どっちが好き？」


うーん、と真由美は考える。


真由美「もうシングルスで慣れちゃったけど……ダブルス、好きだよ」


そっか！と嬉しそうな向日。
向日くんもだよね、と真由美は言った。


向日「まぁな。けど、侑士はどうなんだろうって最近思う」


真由美「え……？」


そう言えばシングルスの練習も多い忍足。
ここ何日かはダブルスの練習の方が少なかった。


向日「侑士、俺がいると本気出せないんじゃないかって思う事もあってさ」


真由美「けど、向日くんに助けられてる事もあると思うよ」


向日「そうだといいけど。わかりにくいからなーアイツ」


真由美「（わかりにくい？私にはそうでもない気がするけど……気のせいなのかな？）」


思わず忍足を見る。


真由美「（最近、話してないかも……藤崎さんとどうなったんだろう）」


向日「真由美？」


真由美「はっ！？な、なに？（いやいや、今は全国大会に集中っ！）」


向日「俺さ……もし試合でどう出されようと、自分の出来ること見つけて頑張るよ」


真由美「向日くん……。うん、そうだね！私もっ！！」


笑顔の真由美に向日の頬は赤く染まった。




『パァァン』

『パァァン』


忍足「姫さんて……」


恵利華「？」


忍足「なんで恋愛禁止にしたん？」


恵利華「え……」


忍足「（あ、打球甘なったわ）その、世界獲るまで彼氏作らんてやつ？」


恵利華「あなたが一番わかってるんじゃない？」


忍足「なんで？」


恵利華「保健室にこもってたって聞いたけど」


忍足「……そういう事か。ほなら……」


『パァァン』


サイドを狙い、見事にそこを突いた。
タタタと恵利華が追いかける。



忍足「あ、跡部が女の子と歩いとる」


恵利華「！」


『パァァン』


忍足「アウトや」


ポンポンポンとボールがフェンスに向かって転がった。


恵利華「……あなた」


忍足「そんな怖い目で睨まんといてくれ。今の、他の人やったらアウトにならんかったやろ」


恵利華「…………」


忍足「あくまで……か。まぁ俺も似たようなもんかもしれん」


片思いなら黙ってればいいし、両思いなら……


忍足「（気付かなければええんや）」


恵利華「一緒にしないで。私は時期がきてないだけよ」


忍足「時期？」


恵利華「（それまでこのままなら……きっと）」


忍足「時期か……」


忍足は向日と真由美の方をみた。


忍足「タイミングって大事やな」


恵利華「えぇ、今のはもう半歩前に出ればアウトにはならなかったわ」


忍足「（この子はほんま……）」