真由美「ねぇ恵利華。別に試合したいって思ってないんでしょ？」


授業の合間の移動時間。
真由美は小走りで恵利華に着いていく。


恵利華「……どうしてわかるの？」


真由美「やっぱり……全国なんて…興味ない？」


恵利華「興味ないわけないよ。」


真由美「じゃあ聞くけど…今まで本気で試合したこと…あるの？家以外でね。」


恵利華「……。」


真由美「日本は狭いって思ってるんじゃない？」


恵利華「真由美…」


スタスタと真由美の前を歩く恵利華。


恵利華「私はテニスで世界一になる。」


そしてピタリと止まって振り返った。


恵利華「恋愛もそれからでいい」


真由美「恵利華……」


もう1ヵ月もテニスから離れるのはこりごりと呟いた。





奈央「和恵って陸部と掛け持ちって良くやるよね」


和恵「うち走るのスキだからね。気持ちいいし。」


奈央「テニスも中学から始めたのに…」


和恵「奈央が練習付き合ってくれたから…上手く……ｺﾎﾝッ…それよりさ」


奈央「ウチとしては続きが聞きたいんですけど」


和恵「……あのさー、恵利華ってなんで1ヵ月も部活休んでたんだと思う？」


奈央「……え！？」


和恵「……なんか悩み事？」


奈央「先輩がいなくなった」


和恵「なんで？」


奈央「ウチが知りたいんじゃけど！！」


和恵「…………」


奈央「あ、和恵置いてくなー！！」






真由美「美並部長…」


美並「呼び出してごめんね」


保健室に真由美がやって来た。
ちょうど話があったからと真由美は美並の横に座った。


真由美「……血圧低いですね」


美並「さすが研修医にはお見通しね」


真由美「（治療……しないのかな…）」


心配そうに美並をみる。
美並は髪をかきあげた。


美並「あー…テニスがしたいな」


外をみるととても天気がいい。
明日は晴れねと嬉しそうだ。


美並「あ、話ってなに？」


真由美「恵利華が……世界一になるまで恋なんてしないって言ってるんです」


美並「……和樹さんね」


真由美は頷いた。


真由美「私には何も言ってくれないから……頼りないのかな私…。まだ傷付いてるのかな…」


美並「真由美ちゃん…」


そっと真由美の手をとった。


美並「恵利華の心配をしてくれてありがとう」


真由美「私、和樹さんが許せない。恵利華をあんなに傷付けて…！」


和樹さんはあれ以来イギリスに行ってるのよねと美並。


真由美「恵利華にそう聞きました。」


美並「私の考えを真由美ちゃんに話すわ」


真由美「？」