お礼画面

【TOS 長編夢主】
《銀は染まる》



「遅くなったなぁ…」



ある日の晩のこと



仕事帰りだった



空を見上げれば、おぼろ月が見えた



眠る前におぼろ月を見ながら、お酒をあおるのも悪くなさそうだ



ちょうど今回の仕事先の酒場のマスターにもらったお酒がある



「メルトキオまであと少しね」



あと少しで目的地のメルトキオだ



あたしは安堵の溜め息を洩らした



順調に道を歩き、もうメルトキオは目と鼻の先だと思った時だ



街の入口に2人の男と1人の女がいた



身なりは決していいものではなかった



商人という雰囲気でもない



なにか独特な雰囲気を漂わせていた…


怪しい…


正直関わりたくない


あたしは木の影に隠れながら、奴らに気取られないように街の入口からではなく、“違うルート”で街に入ることにした



と言っても…街の入口から少し外れた所にある下水道…



こんな所を好き好んで通るのは、ゼロスとあたしくらいだ



夜のメルトキオは封鎖される



だから仕事で帰宅が遅くなった時はあたしも使う



け・れ・ど



アホ神子だけは、仕事とかじゃなくて、ただたんに遊んで帰りが遅くなったから、ってな理由で使ってるけど…



呆れた話よね



とりあえずそこを通って帰ろうとした



木々の物陰に隠れながら頭を下げて、移動し、奴らの近くを通った時だ


ふと、耳に信じがたい言葉が入ってきた



「………確かなのか」



「えぇ。簡単に情報を聞き出せた上に、神子が女好きと言うのは本当だったわ」



「それでどうだったんだ」



「えぇ。金品関係は1階。神子が寝起きしてるのは2階。もうじき、執事とメイドは休む時間なはず」



「神子は2階か…。2階から忍び込んで、とっとと神子を殺して、金目のもの奪おうぜ」



「…………ふ~ん」



あたしは腕組みをし、物陰で息を潜めながら、静かに奴らの話を聞いていた



「やっぱり止~めた。下水道臭いし、まだ正門開いてるし、そっちから入ろ」



あたしは進路を変更し、正門へと歩き進めた



正門の目の前にあたしは来た



門を潜れば、あとは自宅に帰るだけ…




で・も…






帰る前にある“ゴミ”の始末をしなくちゃね



「あのぅ~すみません」

「ん?なんだお前」
――――!!!?
―――――――
―――――――――
………………
………………



真っ赤だ…
あの時と同じだ…
そして今のあたしも…



あたしの銀色の髪は今は見る影もない



今の…
今の………あたしは醜い…



髪も頬も…身体全身が赤黒い血でベットリだ



闇夜に綺麗に輝く銀色のおぼろ月がイヤミなほどに、あたしの髪を照らす



こんな姿、ゼロスには見せられない



今日のことがゼロスに知られたら、きっと怒るに違いない…



だけど…




この身が鮮血で穢れようともあたしは…
あなたを守れれば…
それで構わない…

[ ログインして送信 ]