「あー!あたしの馬鹿馬鹿…なんで挑発にのってあんなことしちゃうかな…」



悔しかった?



見返してやりたかったから?



それともあの人に…



ジェイドに…



認めて欲しかったから?



あの人と対等になりたかった?



静かな部屋にポツリといたシアは、ベットに仰向けに寝転がりながら、目を伏せていた



やっぱり…



「悔しい…」



「優勝したのにですか?」



急に人の気配を察知し、シアはガバリと起きあがった




「ジェ、ジェイ…ド…」



「はい」



「な、何か用ですか?…今、自室で待機命令中なんですけど…」



ワザと強い口調で強がってみる



だけど、ジェイドにはお見通しだったみたいで…



あたしにはそれが一番悔しかった



「無理してて疲れませんか?」



「別に普通ですけど」



ふと、ジェイドが溜め息をついているのに気付いた



仕事に戻るのだろう…



そんな風に思いながら



けれど、予想に反して、ジェイドはシアのベットに座る



ジェイドは何も言わず、シアの頬に手を添えた



「―――っ」



添えられた頬から優しくなぞって、下へ移動してゆく



頬から唇の順になぞっていく



「まぁ、素直じゃない所もあなたの魅力の１つですがね」



「！！？」



そんなことない!と言いたかったけど、ジェイドの親指がシアの唇に触れたままで話すことができない



シアはジェイドの手に自分の両手をそっと重ね、そのまま自分から引き離す



「別に⋯無理なんて⋯」



ぐすん、と鼻をすする音が聞こえた



シアは俯いており、泣いているのかはジェイドからは見えず、そのままシアの言葉を待った



するとポツリポツリとシアが話し出した



「あたしは⋯いつもどんなに頑張っても…中将の娘だから贔屓されてるとか…女のくせにとか⋯そんな言葉、今まで何度も言われたし⋯⋯言われ慣れてるから⋯そのままでもいいと思ってました⋯」



「⋯⋯⋯⋯⋯」



「でも⋯心の中ではやっぱり悔しくて⋯本質をみてもらいたいし⋯女だからとか関係なく、ちゃんと実力を見て欲しい⋯」



「以前にも似たようなことを言いましたが⋯貴方は誰よりも足掻いて、周りに何とか認められようと頑張ってるじゃないですか」



「それでも⋯それでもね。やっぱりそれだけじゃダメなんです。⋯⋯だからあんな安っぽい挑発にものっちゃってさ⋯ほんと⋯バカみたい⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



シアは声を僅かに震わせながら、隣に座るジェイドの胸に力なく顔をうめると小さく呟く



「あ～ぁ⋯ほんっと⋯悔しいな」