レナスが冷淡に言い捨てた直後、不意に何者かの気配を察して振り返る



そこへ聞き覚えのある声が城内に響く



「ルーク!!」



ガイが飛び込んできて、剣を抜き打った



容赦のない一閃



だがそれをシンクとレナスはすぐ様反応し、避けた



しかし、着地した瞬間シンクの服の胸の部分が僅かに裂けたのだ



そしてその服の隙間から何かが音を立てて落ちた



それは先程、ルークのデータを採取したディスク



「ちょっとそれ返してよ!」



そのディスクはガイに拾われてしまい、レナスはすぐ様取り返しにガイに踊りかかった



無論、ガイも黙ってやられるはずがない



「はぁ⋯ディストのせいでイライラしてたしちょうど良かった⋯。あたしの相手してよ。ねぇ…ガイ?」



不敵な笑みを浮かべると、その次には遠慮のないレナスの攻撃がガイを襲う



レナスは高くジャンプすると、器用に壁面を台にして強く踏み込む



そのまま勢いをつけて容赦のない蹴り技をガイに向ける



一時的とはいえ共に旅をして、仲良く話までした仲であってもなんの躊躇いもなかった



「くっ…」



とっさにガイは刃の部分で受け身を取った



「飛燕連脚」



だが、レナスにダメージも与えられず、そればかりか攻撃も止められず、再び連続の蹴り技が容赦なくガイに向けられた



剣で受け身は取っていたものの、身体は後ろへ後ろへと後ずさる



「にゃっは～！たのっし～」




苦戦を強いられているガイに対し、元々好戦的なレナスは実に楽しそう



そんな悦楽したレナスに水を差す鋭い槍が眼前を飛んできた



それは彼女の頬を掠め、床へと突き刺さる



「!!」



槍の飛んできた方向を振り向くと、そこにいたのはやはり見慣れた顔



「足癖が悪いのは感心しませんねぇ。陛下が嘆きますよ?」



「五月蝿い、死霊使い！邪魔しないでよ。興が削がれるじゃない」



レナスはその燃えるような紅い瞳で冷たくジェイドを睨みつけるが、彼はいつものように飄々としている



そんな彼の態度が気に入らない、という様子のレナスはふと頬に違和感を感じて指先でその頬に触れるとヌルッとした感触にその整った顔を僅かに歪ませる



その指先には真っ赤な血が付いていた



ジェイドの投げた槍がレナスの頬を掠めた時に付いた傷



「⋯⋯⋯⋯シンク、ちょっとガイの相手よろしく。そっちはあたしが全部片づける」



「⋯⋯⋯ハァ⋯⋯好きにしたら」



ツインテールの女の子アニスの相手をしてたシンクに向かってレナスが言うと、シンクはガイへと超人的な跳躍力で移動してゆく



代わりにレナスがアニスのところに向かってゆく



「ごめんねぇ～。導師守護役（フォンマスターガーディアン）、途中で水差して。変わりにあたしが相手してあげるからさ☆」



レナスはアニスに向かって手をかざすと譜術を放った



「ウィンドカッター!!」



「きゃあ!!!」



アニスは勿論、近くにいたティアまでもが壁に叩きつけられ、ズルズル崩れ落ちていった



「さて、まとめて2人片付けOKー！さぁ、死霊使いジェイド次はあんたよ」



レナスは悦楽した表情を浮かべ、ジェイドに歩み寄った



「ねぇ、どうだった？ここに来るまで。なかなか楽しめたでしょ?」



ジェイドもまた口端をあげ薄く笑うと眼鏡を上に押し上げた



「あぁ、あの素敵なトラップはあなたでしたか」



「そうだよ。なかなかなもんでしょ?」