「か…可愛いかも…」



まだ朝日が昇って間もない頃、ティア・グランツは頬をほんのり赤らめ、ある者をジッと見つめて呟いた



「ん～むにゃ…ン、ごはん… 譜業…すぅすぅ…」



ティアの視線の先にはレナスがジェイドの肩に寄りかかり、むにゃむにゃとよく分からない寝言を言っている姿があった



「ティア、これはそんなに可愛いものでもありませんよ」



「えっ！あ！私⋯今そんな事言ったかしら？多分気の所為です」



無意識に出た言葉なのだろう



真面目なティアにしては珍しく雑な弁解をした時だ



背後から声がしてジェイドとティアはそちらに視線をうつした



「おはよう、ジェイド」



「あぁ、ガイいいところに。レナスを起こしていただけませんか?私は見ての通りこの状態なので」



そう言われるとガイはその状態を確認すると無防備にジェイドの肩に寄りかかって眠るレナスを見た



「レナスの奴こんなところで寝てたのか。まぁ別に構わないが⋯お～い！レナス！朝だぞ。起きろ～」



「勿体無い…あんなに可愛いのに……」



「ん?ティア何か言ったかい?」



「えっ!!い、いいえ!」


「ん？こりゃぐっすりだな。一応捕虜なのにどういうメンタルしてるだ？起きろレナス～?」



「……………い……」



「？」



「……うっさい!!!人が気持ちよく寝てんのに五月蝿い！！！」



レナスはその燃えるような赤い瞳を細め、キッっとガイに睨みをきかせる



レナスのあまりの剣幕に気圧されたガイは思わず1歩後ろに後ずさりする



「!!!!!!レナス…?」



どうなっているのか訳が分からず、引きつった顔で怯えるガイを尻目にジェイドは実に涼しい顔でレナスを窘める



「レナス～ガイが怯えてますよ」



「あんた、絶対確信犯だろ…?」



「さぁ？私には何のことかさっぱりですが？」



ここで漸くレナスの意識がだんだん現実に戻ってきたのか、辺りをキョロキョロと見回し、3人に向け言葉を発した



「んん？……おあやう…でうしての?（おはよう、どうしたの?）」



目を擦りながらまだ眠たげなレナスの顔はまるで猫のようだ



「レナス朝です。起きて下さい」



「…あい…顔洗って…くる…」



「うむ、どうやら寝起きの悪さは格段に成長してますね。さて、ガイにはもう１人起こしていただかなくては」



「ってあんたやっぱり知ってたんだな。…ったく、もう１人はルークの奴だな。起こしてくるよ」



そう言うとジェイド達を背にし、ガイはルークのもとへ向かう



一方、近くの川に顔を洗いに行ったレナスはというと



「ん…なんだこれ？」



自分の周りをちょろちょろと動くものに目をとめた



「みゅーですの。みゅーはチーグルでブタザルですのー♪」



「そういえば、ルークがこんなの持ってたね」



昨夜、ろくにジェイドらが話していたことを聞いていなかったレナスはみゅーの存在もうろ覚えであった



濡れた顔を腕で拭い、しゃがみ込むとみゅーを持ち上げる



「………………………………もふもふ…………」



「みゅ?!」



「もっふもふ！」



突然みゅーを抱きしめるレナス



「可愛い♪」



そして、抱きしめたまま皆のところまで戻っていく



「ねぇ、ねぇ！これいーなぁ♪なんでルークに懐いてんの?」



「ご主人様に助けてもらったから恩返しするですの！」



「うぜーつうの」



「…みゅうとレナスセットだと尚、可愛いわ…」



そんな、たわいもない話をしながら簡単な食事をとっていた時だ



「あっ、ねぇガイ？昨日のさぁ…」



そう言ってレナスがガイの肩に手に触れようとすると…



「うわぁぁ!!!!」
「なにっ!?」



「レナス、そういえば昨日の話を聞いてませんでしたね」



「うん！」
「即答かよ」



さすがのルークも呆れ顔である



「だって、あたし関係ないしさ」



嘆息をもらしながらルークはレナスに説明をしてやる



「はぁ…ガイは女嫌いなんだよ」



「違う！恐怖症だ！全く…すまない、驚かせちまったな。ある程度の距離なら平気なんだが、触られるのはちょっと…」



「ふ～ん。あ！それで昨夜話してる時、微妙に距離感あったんだね！まぁ別にいいよ。それより……さ」



チラリとレナスが見る先は、まだ朝も早いため薄暗い木の間