「さっき聞いた通り、あたしはグランコクマで⋯⋯生まれたの」



レナスは忌々しげに奥歯をギリッとかみしめながら話を続ける



「ディストもジェイド兄もお城に仕えてたから…あたしも時々、城の方にはディストに連れられて、片付けとか手伝わされてた⋯。空き時間にジェイド兄や現皇帝ピオニー陛下⋯ピオ兄に相手してもらってたのよ！」



だから、と言葉を続け、顔を赤らめながらレナスは言う



「その時の癖で⋯つい⋯言ったというか⋯。敵対してないと気が抜けて言っちゃうというか⋯」



ごにょごにょ口ごもりながらレナスは両手の指先をもにょもにょと絡ませ手遊びしながら、言い訳っぽく説明する



ふと、ジェイドの方を見ると視線に気付いた彼はしたり顔でこちらを見ており、なおさら恥ずかしくなって噛み付くようにレナスは声を荒らげた



「むっ、な、なによ！だってずっとその呼び方だったんだから仕方ないじゃない！」



「まぁ、暫くは旅の同行をしてもらいますし、気兼ねなく呼んでもらって構いませんよ」



ジェイドは意地悪そうにククッと笑いながら言った



「ぐっ⋯」



「ふーん。なぁなぁ、そういえば母親はどうしたんだ？一緒にダアトにきたんだろ？」



ルークの何気ない質問にレナスの緩んでいた雰囲気が一気にピリッと張り詰める



「…………母親?………そんなの知らないわ…」



レナスはそういうと立ち上がり、みんなとは離れた木の陰に行ってしまった



さすがのルークも聞いてはいけないことを聞いてしまったと、悟り少々焦った様子で周りを見渡した



「…俺、なんかマズいこと聞いたか…?」



頭をポリポリかき、困り果てるルークにジェイドはやれやれと息を吐く



「母親のことはディストもレナスも一切話さないので、私もわからないんですよ」



「え？ジェイドも知らないのか?」



「まぁ⋯そのへんの立ち入った話は本人が話したくないようなのであまり深く問いただしたことはありません。それより、血の繋がりこそありませんが、私の大事な妹を悲しませましたね？」



「うっ……わ…わ～ったよ！謝ればいんだろ!!」



真っ黒オーラ全開ジェイドにビビりまくったルークはそそくさとジェイドから逃げるようにして#NAME1##を追いかけた



「はぁ～なんで俺がこんな事…」



少し離れた木の陰にレナスの後ろ姿が見え、ルークが歩み寄ると何やらガチャガチャと金属が擦れる音が聞こえる



背後からゆっくりルークは近づいてみると



「?」



よくみればレナスは譜業いじりをしていた



「なんだよ～俺言っちゃマズいこと言ったと思って謝りにきてみれば…」



ルークは小声のつもりだったがちゃっかりレナスの耳に届いていた



「…別に。あれ以上話すことないと思ったから。それに少し疲れたし…」



ルークはハァと息を吐いてレナスの隣に胡座をかいた



「なにやってるんだ？それ譜業だろ？ガイのやつもそういうの好きみたいだけど、女のお前でもそういうの好きなんだな？」



何気ない世間話を振りながらレナスの手元を覗こうとしたルークは急にハッとした様子で立ち上がった



「おいっ！お前…まだ頬の傷っ!!…俺ティア呼んで……!!!?」



リグレットの譜銃を掠った怪我に今更ながら気付いて、ティアを呼ぼうとしたルークはレナスに腕を掴まれ引っ張られる



「掠り傷よ。ほっとけばいい…それに、お前じゃなくてあたしはレナス」



「んなこと今はどうでもいいだろ?傷残ったらどうすんだよ！」



「どうして？ダメ、なの？ちょっと掠っただけでしょ？それにこの程度なら痛くないし」



ね？と首を傾げて、言い聞かすみたいにレナスはルークに同意を求める