「ただいま!母上」



「おかえりなさい、ゼロス。……あら‥レナス？久しぶりね」



「………あっ‥あの…」



レナスはゼロスの背中に隠れるようにしてくっついたまま、おどおどして口篭る



そんなレナスを見ていられなくなったゼロスは1歩前へ出て言う



「母上⋯レナスも今日からここに一緒に住むんだ！いいよね！？」



「ゼロス‥?一体急にどうしたというの‥?」



「…………」



悲しげに俯くゼロスと困惑するゼロスの母ミレーヌを見てレナスは更に申し訳なさでいっぱいになって涙が溢れてきそうになった



ミレーヌはゼロスの肩に手を置き、床に膝をついて優しく問いかける



「黙っていてはわかりません。ゆっくりでいいから話してごらんなさい」



だが、先に口を開いたのはゼロスではなく、レナスの方だった


おずおずとゼロスの背からひょっこりレナスが顔を出し、ビー玉のようにまん丸な緑の瞳からはぽろぽろと涙が零す



「ごめんなさい…ごめ…ん……なさ…い｡あたしが…悪…いの…｡ごめっ…⋯っな、さい⋯ヒック⋯⋯ゼロ…スは…悪く…ないの…」



声を押し殺しながら泣くレナスを見ながらゼロスは唇を噛みしめ、自分もつられて涙が出そうになったが、グッと堪えて声を絞り出す



「母上！レナス⋯家では…おじ様、おば様に辛く当たられて居場所がないんだ。だから…うちで一緒にいてもいいでしょ…?」



「…でも、急にいなくなったら心配になります｡うちで預かることは連絡はしますよ。これが条件です」



優しく２人に笑いかけ、ミレーヌは泣いているレナスとゼロスを抱き寄せた



「母上！ありがとう!」



「………（お母さんって温かい…あたしの母様もこんなふうに温かいのかな…?）」



親に抱きしめられたことのないレナスはミレーヌに抱き寄せられながら、自分の母への想いを密かに募らせる



「さぁ‥あとのことは任せなさい。まず、あなた達は温かいお風呂に入ってから食事を済ませてしまいなさい｡セバスチャン、レナスの部屋を用意してあげて」



そうミレーヌが言うと、後ろに控えていたセバスチャンはかしこまりましたといい、ミレーヌ達のいる部屋を後にする