まだ人が起きるには早い朝、外に人の気配はまだなく、鳥たちの鳴き声だけが響き渡っていた



そんな時間帯にレナスの部屋を訪れる1つの人影があった



その人影はコンコン 、と彼女の部屋の扉を軽く叩くが、返事はない



訝しげにしながらその影はまたノックをする



コンコン



だが、やっぱりなんの返答もない



コンコン



再びノックしても返事はないのは変わらず、どうやら部屋の主はまだ寝ているようだ



コンコン



今度は少し強めに叩いてみる



すると部屋の中でゴゾゴゾと布団が擦れる音が聞こえ、次にズルズルと床を這う様な音がする



クラトスは中がどうなっているのか安易に予想がついてしまい思わず溜め息を漏らした



「レナス？」



「…………は～い」



ガチャ


部屋の扉が静かに開くとそこにはタンクトップにショートパンツと寝巻き姿のレナスが床でペタンと座っていた



「あ、はは？やっちゃったー」



「レナス⋯あの後、酒場に行ったな？」



クラトスは静かにレナスに問う



「………⋯⋯あ～う～ん。行ったような行かなかったよ～な？」



「行ったんだな？」



「あ～はい、行きました⋯だって⋯目が覚めちゃったんだもん」



「………⋯⋯」



「ご、ごめんなさい……」



「もう今回は仕方がない。いいから早く着替えて下へ来るんだ」



「了解～」



レナスはそのまま急いで脱ぎっぱなしにしていた服を拾い上げ、着替えようとする



「まったく⋯まだ扉が開きっぱなしだレナス⋯」



「あー、大丈夫！このまま着るだけだし！」



「⋯⋯⋯そういう問題ではない」



クラトスは心底呆れ模様で額に手を当て、頭痛そうにしていた



レナスが着替えている間、クラトスは先にロビーに向かい待つことにした



暫くすると着替え終えたレナスがバタバタと階段から降りてきて、待っていたクラトスに顔を会わすやいなや、深々と頭を下げる



「ごめんなさい！」



頭を下げたまま視線だけをチラリと様子を窺うようにクラトスを見ると腕を組み、不機嫌そうな姿が垣間見えた



「…あれほど、酒は控えろと言わなかったか…?」



「努力はしてます♪（努力…はね…） 」



クラトスは呆れたのか諦めたのか、深い溜め息を吐いた



そんな彼の様子を見てそろそろ説教も終わり時かと予測し、レナスは頭を上げ、にっこり笑い、酒のことから話を遠ざけるように話を変えた



「今日は第１の封印でしょ？」



「あぁそうだ。場所は旧トリエット跡だ」



「⋯⋯フゥン…最初は……味覚…から‥…か」



ポツリとレナスが呟くと、その呟きはクラトスにもしっかり聞こえていた



「………⋯⋯」



クラトスは何も言わず、無言



レナスはそんなクラトスを無視して続けて話す



「哀れよね…天使に近づくってことは……」



そこまで話すと他の声に遮られた



「クラトス！もう起きてたのか?」