2人は急いでユアンの私室へと向かい、扉を勢いよく開ける



開けたその先の光景は、空の酒瓶が何本も床に転がり、挙句探していたレナスがグデグデになって仰向けになり、なんとも心地よさそうにソファーで寝ていた



「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「…………⋯⋯⋯」



ユアンとボータはその光景を見ると2人して額を手で覆い、項垂れた



そしてその2人の後から追いかけてきた兵達は気まずそうに目を背けている



気まずい沈黙に包まれること数秒、とうとう沈黙に耐えられなくなった兵が口を開いた



「申し訳ありません！止められていたのは重々承知しております！ですが、レナス様の御命令に私たちが逆らえるわけもなく…」



「こうなったわけだな…」



ユアンはまた大きく溜め息を吐き、半ば諦めてもいるよう



「もういい…なにかレナスに掛ける物を用意してくれ」



「は…はいっ！あ、ボータ様⋯少しお耳をよろしいですか」



「どうした？」



ユアンがぐっすり眠るレナスを見下ろしている間、兵はボータに耳打ちをした



「⋯⋯⋯うむ、分かった。ご苦労だった」



「は、はい！では、失礼します」



「あぁ」



「ボータは業務に戻ってくれ。私はこのままレナスが起きるまでここにいる。何かあれば報告をくれ」



「ユアン様、1つ報告があります。どうやら我々が留守にしてる間、目的のネズミが近くを彷徨いていたのを確保し、今は捕虜として地下の牢に捕らえております」



「⋯⋯⋯⋯⋯そうか。ちょうどいいタイミングだな。そっちは任せる」



「承知しました」



兵とボータ達が部屋を出ていくと、ユアンは扉を閉め、ソファーで眠るレナスを見下ろす



「まったく⋯この酒癖の悪さだけはまったく直らんな⋯⋯いや、直す気がないのか⋯」



ユアンは腕を組み、ソファーの背もたれの部分に腰掛けると、レナスのお酒で火照った頬に手の甲をそっと当てる



「んん⋯⋯」



すると、お酒のせいで体温が高くなっているレナスにはそのユアンの手の温度が心地よかったのか、自分の頬を擦り寄せた



と、その時



バタバタと慌ただしい足音が聞こえ、ユアンはレナスから手をはがし、立ち上がる



「リーダー！！ブランケットを持ってきました！」



「あぁ、入ってくれ」



「はい！失礼します」



兵はブランケットをユアンに渡し、部屋を早々に後にした



ブランケットを受け取ったユアンはレナスの足にそのブランケットを掛け、可笑しそうに笑って言う



「フッ⋯アイツがこんな光景見たら、さぞ見物だろうな」