しばらく続いていた歌は終わり、周りからは歓声と拍手が飛び交う



そんな拍手喝采を浴びる銀髪の女性は、観客達に目配せすると周りの拍手に応えるように微笑み、会釈した



そして彼女は自分から見て、正面の椅子に腰かけている男性の前まで歩み、満面の笑みで話しかけた



「王様、本日は最後まで御覧下さりありがとうございました。姫様もわざわざ足を運んで下さり光栄です」



「なにを言うレナス､そなたの声を聴く為ならどうってことない」



「えぇ、今日もレナスの歌声はとても素晴らしかったですわ。でも暫くレナスの歌を聴けないのは残念ですわね…」



先程の笑顔から急にシュンとしてしまった姫にレナスと呼ばれた銀髪の女性は申し訳なさそうに答える



「申し訳ございません…王宮専属歌姫として歌わせて頂いてるのに､暫く留守にする事をお…許し…」



と、言葉を言い終える前に それを遮る叫び声が響き渡った



「ぬわぁっー」



ゴンっ
叫び声と共に何かがぶつかる音、歌とは違うある意味とてもいい音が響いた



しばしの沈黙後



レナスが最初に沈黙を破り、手を額に当て呆れたようにしながら



「ハァ…王様、姫様…妹レオーネがゼロス様にご迷惑をかけてるようですので、私はこの辺で一旦失礼させて頂きます。レオーネには後程、御挨拶に伺わせます。」



それでは失礼しますと付け足し、深々とお詫びも込めた会釈し声のする方へ向かった



勿論、王様も姫様も日常茶飯事なのか、特に驚くでもなくにこやかに私を見送った