真相




◇◇◇◇


見世物同然の婚約披露パーティを終えたアスランは、引き止めるウズミとカガリを振り切って帰路についた。
特にカガリはかなり強引だったが、パーティの熱気にあてられて体調が優れないと嘘まで吐いて、やっとの思いで諦めさせた。アスランの正式な許婚者となった余裕もあったのかもしれない。ガンガンと訳の分からない音楽を鳴りっぱなしにしたクラブに四六時中入り浸り、大勢の人間を侍らせているアスランが、こんなお上品な集まりで体調を崩すなど有り得ないのだが。唯一その事実を知っているパトリックだけが嘘を見破り、ジロリと睨みを効かせて来たものの、無論そんなものが通用するはずもない。命じられた通りに立ち回ったのだから役目は終わりのはずだ。
ウズミたちに心にもない美辞麗句を並べるだけなら別にアスランでなくても良いし、パトリックの方が遥かに長けている。

名残惜しそうにするカガリに「また来ます」と、これまで適当な女に星の数ほど言ってきた同じ台詞を棒読んで、アスランはもう一刻も我慢出来ないとばかりに屋敷から出たのだった。




「おや、こりゃまた随分とお早いお帰りじゃねーの」

周到にも迎えは呼んであったから、即座に車に乗り込もうとしたアスランの苛立ちを、わざと煽るかのような言い方に足を止める。
可能な限りの鋭い視線で声のした方を睨み付けると、予想に違わず、発信源は見慣れた浅黒い肌の男。真剣な顔などしたことないのではないかと疑いたくなるほど常時だらしなくニヤニヤとしているが、勿論この時も例外ではなかった。
「ディアッカ!物見高すぎですよ!」
身長の高いディアッカの後ろから、ひょこりと姿を現したニコルが、すかさず彼の袖を引いた。




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