真相




「しかしなんでこの家の庭には無駄に樹が多いんだ?こんな一等地に林や森でも造るつもりか?だとすれば不経済極まりない。とても正気の沙汰とは思えん。上流階級って奴らの考えは全く理解出来んな」
またも本題から外れた所で、しかもどうやら本気で呆れているらしい。
キラも詳しくは知らないが、確か高名な文化人の監修による、自慢の前庭であるはずだ。それもイザークからすれば“不経済”で“正気の沙汰”ではないとバッサリと切り捨てる程度のものなのだ。綺麗な庭を眺めるのは嫌いではないが、キラもどちらかといえばイザークの意見に同意だった。
可笑しな部分で共通意識を持ってしまったからか、矢張り感覚のズレたイザークがアスランを連想するせいか。
何だかもうどうでもいいやという投げ遣りな気分になった。

キラの中で張り詰めていたものが急速に弛んでいく。
イザークがそんな効果を狙ったつもりは全くなくて、ただ単に思ったことを言っただけなのも承知の上だが、ここはもう一方的にでも生まれた共通意識に任せてしまおうと腹を括った。

信じた人に裏切られ、実際キラは酷く傷付いていて、ボロボロだった。




「…………ほら、やっぱり辛かったんだろうが。お前は一体なににそんなに虚勢を張ってるんだ」

イザークは小さな子供のように泣き出したキラを、そっと引き寄せて胸を貸してくれた。その優しい仕草や言葉は明らかに労りの籠もったもので、漸くキラはイザークが自分を揶揄かい目的ではなく、本当は心配して来てくれたのではないかと気付いた。
訊いても素直に答えてくれるタイプではなさそうだし、訊くつもりもないが、理由はどうであれ、伝わる温もりは確かにここにある。人の体温が安心出来るものだと思い出してしまったキラは、暫く涙を止められそうもなかった。




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