真相




「今までの‥まぁ所謂遊びで女たちと付き合っていた時とは、何かが違う気がするそうだ。ニコルの意見を尊重するとしたら、アスランを変えたのは、お前じゃないのか?」
「僕…?」

余りにもキラにとって都合のいい解釈に、却ってぽかんとしてしまった。それでもイザークは持論を撤回するつもりはないらしく「そうだ」と小さく肯定した。


「あの…貴方、もしかして見てなかった?とか」
イザークがあの場にいなければ、最初からこんな会話は成り立たない。そんなことは百も承知の上で、思わず確かめてしまった。


優しくされてその気になって、勝手に舞い上がって。

叩き落とされたのだ。
しかもあんな公衆の面前で。



「…―――、う…」
折角考えないようにしていたのに、この男の所為で思い出してしまった。
あの、「すまない」と言った、アスランの顔を。

甦ったら、もう駄目だった。
みるみる全身が熱くなり、行き場を求めた熱が、瞳の奥の方に集中し、溢れてしまいそうになる。


静かにキラの変化の一部始終を眺めていたイザークは、やがて小さく溜息を吐いた。
「泣きたければ泣けばいいだろう。別に誰が見ているわけでもあるまいし」
「あ・なたが、いるじゃないですか」
もう在庫の少ない意地を総動員して辛うじて笑んでみたが、あまり成功したという自信はなかった。
「俺ならただの通行人だ。それでも見られなくないって言うなら‥そうだな。その辺に生えてる馬鹿でかい樹だとでも思えばいい」
そして不意にイザークは不快そうに眉を寄せ、昼間なら家人や訪問者の目を楽しませてくれるだろう、美しく整えられた庭へと顔を巡らせた。




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