真相




キラが黙っていると、というか正確には何と返せばいいか考えていただけだが、イザークは続けて言い添えた。
「知り合いに…というか仲間内だな。そいうことに長けたニコルという奴がいるんだが。そのニコルが言うんだから信用していい。だから諦めるのはまだ早い」
「えーと…」
とはいえ詳しい設定を説明してくれる期待は、抱くだけ無駄のようだ。頭の回転にはそこそこ自信のあるキラだが、何やら新しいキャラまで登場しているというのに、そこまでこちらの想像力で補えというのか。
が待っていても今度はこちらの発言の番のようで、イザークは完全に口を閉じている。仕方なしに簡単な仮定を立ててみた。
(ニコルさんっていうのはアスランやイザークさんの友達で…あ、前にアスランの大学で会った、あの色の黒い人のことかな?)
だが正直あの男には良い印象のないキラである。イザークの言った“そういうこと”に長けるというのは、他者の感情の機微を洞察することを得意とするという意味に受け取れる。ならばあの男とニコルという人物のイメージは一致しない。そういえば浅黒い男はディアッカと呼ばれていたのを、暫くしてから思い出した。
どうもニコルという人物は、本当にキラの知らない人のようだ。

ふと自分よりも遥かに付き合いの長い彼らが、アスランをどんな風に見ているのか、少し聞いてみたくなった。諦めの悪さに辟易するが、アスランの気持ちがキラの求めたものと違っていたとはいえ、自分が彼を好きな事実は変わりないのだ。認めるのは悔しくて哀しいが、好きな相手のことを知りたいと思って何が悪い。
尤もイザークが答えてくれるかはまた別問題だが。

躊躇いながらもキラは口を開いた。

「そのニコルさんが…何を仰ってたと?」
きっとまともな返事は貰えないだろうというキラの予想に反し、イザークは意外にもあっさりと答えてくれた。




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