真相




いずれにせよ彼がキラを待っていたのは疑いようもなく、その目的は揶揄かいがてらキラがどんな惨めな顔をしているのかという興味本意に違いない。生まれながら不自由など感じたこともない彼らは、常に暇を持て余しているのだ。アスランにしてもキラと出会うまでは、いや、キラが知らないだけで出会ってからもそうだったのかもしれないが、何をするにも全て動機は“暇潰し”だった。

一度も金銭的な苦労など体験しない、誰もが羨ましがる約束された将来。


だが決められたレールを走るだけの毎日だと解釈すれば、それはそれで酷く退屈なものなのだろう。そんな彼らが法に触れない範囲で享楽に更けったとしても無理もないのかもしれない。
そうだ。“恵まれている”が前提なのだ。
だから正反対のキラはそういう連中が嫌いだった。今でも大嫌いだと言い切れる。
二度と関わり合いたくない。

もう、二度と。



キラは噛み締めた唇を解いた。
「―――あぁ。盛大にフラれた惨めな人間の顔でも拝んでやろうと思ってここで待ってたってわけですね。でもこんな可愛げのない顔で生憎でした。それとも今からでも泣き喚いて見せましょうか?その方が話のネタとしては面白いんじゃないですか?」
唇の端を吊り上げると、わざと露悪的に一息に言い放った。失恋ごときで大騒ぎする馬鹿の顔さえ見られれば、イザークの気は済むはずだ。興味を満たしてやれば向こうから去るだろうし、こちらも追い払う手間が省ける。一石二鳥だ。

なのにイザークは相変わらずまるでキラの言葉が聞こえてないかのように、的外れで意味の分からない言葉を返してきた。
「雰囲気が変わったそうだぞ」
「…――――。は?」
主語も装飾語もなし。会話の流れさえ断ち切るような端的な言い方をされたら、まるで外国の言葉で聞かされたと同じ気分になった。
たったひとつこの男が相手の戸惑いなど汲んでくれるタイプでないことは、イザークをよく知らないキラにもなんとなく分かった。




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