真相




「イ・ザーク…さ‥ん?」
「ふん。名前くらいは知ってたらしいな」
言いながら座り込んだままのキラの腕を掴んで、強引に引っ張り起こしてくれた。細身に見えるが意外に力強いらしい。
「あ・ありがとう、ございま‥す」
何度か会ったことがある彼は、キラの認識ではアスランの“遊び仲間”だ。冷たささえ感じる美貌に、印象的な銀色の髪の持ち主とくれば、忘れようったってそうそう忘れられるタイプではない。

「…―――なんだ?」
元々鋭い目にジロリと睨まれて、キラは慌てて目を逸らせた。いつの間にかジロジロと眺め回していたらしい。
「あ、えーと。なんで此処に?」
「招待されたからだが?」
そんなことは勿論キラだって分かっているし、そういう意味の質問ではない。このどこか感覚のズレた所がアスランを彷彿とさせて、キラの胸がチクリと痛みを訴えた。
それを打ち消そうと敢えて首を左右に振った。
「そうじゃなくって。どうしてこんな玄関先に立ってたのかを聞いてるんですけど」

招待客なら大広間でアスランとカガリの婚約を祝っていればいい。
こんな惨めな姿など、他の誰にも、ましてやアスランの友人になんて見られたくなかった。何かの用事でたまたまここに居合わせただけだったとしても、タイミングの悪さに苛立ち、つい口調が刺々しくなってしまう。
だがイザークはまるで気にならないかのように、全然会話の成り立たない言葉を返してきた。
「いいのか?このまま引き下がって」
その台詞にイザークもあのやり取りを見ていたのだと確信する。キラも相当な早さでここまで逃げて来たはずだが、警備員たちと話している僅かの間に追い抜かれていたのだろうか。
それにしても早過ぎるから、ひょっとしたら顛末を最後まで見ずに、イザークはあの広間を出たのかもしれない。




4/17ページ
スキ