真相




やっとの思いで玄関ホールに到着する。数人の使用人が目に入るも、絶対声などかけて欲しくはなかったから、足を緩めたりはしなかった。
その使用人の中の一人が、突然現れた少年がキラであることに気付いて、慌てて扉を開ける。別にそんなことしてくれなくても扉くらい自分で開けられるのだが、彼らにとってはキラも雇用主の息子なのだ。
(日陰者だけど、ね)
卑屈過ぎると思うが感情のコントロールなど出来やしない。そして使用人が扉を開けてくれて正解だった。当事者のキラは全く気付いてなかったが、そうでもしてくれなければ、多分扉に激突していたに違いない。


「う・わっ!!」
礼も言わずに駆け抜けた玄関の向こうは、当然屋外だ。まさか扉のすぐ外に誰かが立っているだなんて思わないから、勢いを緩める間もなくぶつかってしまった。結果、お世辞にも大柄とはいえないキラの方が、小さな悲鳴と共に体勢を崩し尻餅をついてしまうハメになる。
不運にもほどがあると、そんな場所に立っていた相手を恨んだのは一瞬で、今の自分にはこんな惨めな姿がお似合いだと思うと、唇が自嘲の形に歪んだ。


「………人にぶつかっておいて、何がそんなに可笑しいんだ?」

それを見咎められたのだろう。直ぐ様頭上から余り感情の籠もらない声が降ってくる。どことなく覚えのある声な気がして、キラはゆっくりと顔を上げた。


屋敷内の眩しいほどの明るさとはうってかわって、外は当然薄暗い。足元を照らす程度のライトがポツリポツリと点在しているから真っ暗ではないが、辛うじて相手の顔が分かる程度の光量しかなかった。

だがそんな僅かな光源でも、煌めく銀の髪を持つ人物は、確かに見覚えのある顔であった。




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