真相




「それは――、困ります!私どもも勝手をしたら叱られてしまいます。ウズミさまの指示を仰がなければ」
あくまでも職業に実直な男に、いっそ好感すら抱いた。だからといって折れることは出来ないが。
「ごめんなさい。でも大丈夫ですよ。僕がやらかしたことについては、また日を改めて父に謝罪しに来ますから。万が一貴方がたが父に叱られそうになったら、キラがそう言っていたと伝えてください」
「…………」

彼らにだって思うことはあるだろう。姉の婚約披露パーティに乱入し、何を勘違いしたものか、その婚約相手を略奪しようとしたのだ。
きっと招待客と同様、キラを蔑んでいるに違いない。それでも彼らは皆一様に無表情を貫いていた。プロ根性なのか本当に無関心なのかは難しいところだが、その反応が有難いと思った。
一方的な思い込みだろうとなんだろうと、少し元気になれた感謝を伝えようと、漸く小さく笑うことだって出来た。
「お仕事の邪魔をしてしまってすいませんでした。どうぞ戻ってください。これ以上の騒ぎは起こしません」


彼らのお陰で幾分浮上したとはいえ、これ以上長居が無理なことに変わりない。
踵を返して早足で玄関を目指しながら、後ろから追ってくる気配がないことにホッと息を吐く。あとはひたすら俯いてこの屋敷を出ればいいだけだ。
キラは殆ど駆け出す勢いで、ただ突き進んだ。
まだなにも考えなくていい。というか考えない方がいい。


無駄に広大な屋敷が憎らしかった。早く。早くここから逃げなければ、自分がどうなってしまうか分からない。想像もつかないような醜態を曝してしまいそうで怖かったし、これ以上警備の男たちの手を煩わせるのはまずい。




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