真相




案の定、返ってきた声は固い響きを帯びていた。
「真相…?」
「あいつがお前から何らかの影響を受けていたのはニコルのお墨付きだ。そんなお前に理由もなくあんな手酷い仕打ちをするほどあいつだって冷酷じゃないはずだ!」
「…堂々巡りですね。第一そのアスランに対する評価も、どちらかといえば勝手に夢見てた今夜までの僕のものです。でもイザークさんたちの知る本当のアスランは、人を人とも思ってない冷酷な男なんでしょ?矛盾してますよ」
「だからお前が変えたんだと言ってるだろうが!とにかくあいつが急に態度を変えてあの娘を選んだのには、絶対に何か裏がある!」

「では、それを知って、何かが変わりますか?」



イザークは不意に、キラのアメジストの瞳に妙な違和感を覚えた。
そこに映し出されるものは、哀しみでも怒りでもそれに伴う涙でも、まして唇に浮かべている微笑みですらなかったのだ。



「知ったところで、何が変わるわけでもない。アスランはカガリと婚約したんです。僕の手は永遠に届かない場所へ、アスランは行ってしまった。―――それだけのことです」





◇◇◇◇


キラは母を喪い、独りで生きて行こうと誓った子供だった。でもアスランと出会い、もう一度だけ全てをかけて手に入れたいと望んでしまった。それが間違いだった。
薄々恐れていたとはいえ、全霊で求めた彼の人は、幻の如く消えた。
自分の手は望むものは掴めない手なのだと、運命に嘲笑われたようなものだったのだ。





イザークの垣間見たキラの瞳は、もう何も映してはいなかったのである。





20121215
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