真相




実際その女たちもこの世の終わりとばかりに泣き喚き流した涙などコロリと忘れ、こちらが驚くほどアッサリと立ち直ると、また違う男に擦り寄っていくのだ。

その程度のことに一喜一憂するなど全く以て馬鹿げている。



「あの…イザーク‥さん?」
掌で口元を覆って突然静かになってしまったイザークに、強く言い過ぎたかとキラが顔色を伺ってきた。
すぐに怒ったわけではないと雰囲気で察することが出来たのだろう。キラは安堵の息をついて明らかに無理矢理だと分かる笑みを浮かべた。
「でもほんと、そんなに気に掛けてもらうことではないです。勝手に思い上がった奴が、勘違いで誤爆しただけですから。僕の素性、少しならご存じなんでしょう?」
「卑屈なことを言うな!」
「だけど、真実なんです」
「お前――!」

「………もう勘弁してください」

気丈にも、キラは笑った。先程とは違う、哀れさや弱さなど微塵も存在しない、力強ささえ感じる笑顔。



「僕、帰りますね」

その不可思議な笑顔に魅入られたようになっていたイザークは、後部座席のシートの上で、身体をドアの方へと横滑りさせたキラの腕を慌てて掴んで引き止めた。
その細さに内心で驚く。
「だ・だから待てと言っている!」
「何ですか?アスランに元気でね、と伝えろとでも?生憎僕もそこまでお人好しじゃ」
いい加減しつこいと露悪的なもの言いをするキラに構わず遮った。

「真相を知りたいとは思わないのか?」

ピクリと身体に力が入ったのが、掴んだままだった手から伝わった。




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