真相




◇◇◇◇


「ごめんなさい、迷惑をおかけしました」


話はアスランがカガリたちの制止を振り切ってアスハ家を出るより数時間前に遡る。

騒ぎを起こして居づらくなった実家の玄関先に、いつまでも留まるのも体裁が悪かろうと、イザークは泣き出したキラを自分の家の車へと誘導した。運転手を外で待機させ、キラが思い切り泣いたのは、しかしほんの半刻ほどであった。
少し冷静になったのか袖口でグイグイと顔を拭うと、キラは驚くほどあっさりと謝罪したのだ。

たった半刻でどれだけの葛藤があり、それを押さえ付けているのか、顔見知り程度のイザークでは計りようもないが、泣き止んだ直後特有の真っ赤に泣き腫らした目以外は、別段辛そうな気配も伺えない。
ただ泣き出す前の意地の張りようを加味すれば、キラが何でも抱え込んでしまう性格なのだと推測するのは容易いことだった。


「……言いたいことはそれだけか?」
「…――――は?」
キラからしてみれば、イザークは充分過ぎるほど気を遣ってくれたと思う。
全く関係のない自分に慰めの言葉(なのだろう、きっと)をかけてくれたし、みっともなく大泣きしている間もずっと黙って傍に居てくれたのだ。余計な手間をかけさせた上、時間を潰してしまった謝罪の他に何が足りなかったというのだろうか。
どうやってもこの人たちとは会話が成り立たないように出来ているのかもしれないと頭を捻って、漸くまだ礼を言ってないことに気が付いた。
「あの…有難うございました……?」
「そうじゃない!」
しかしそれもイザークの求めていた言葉ではなかったらしい。「しかもなんで疑問形なんだ!?」と一喝されて首を竦める結果に終わった。




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