真相




しかしディアッカの方は至極ご不満そうに鼻を鳴らして返した。
「ああ?んなこと言ってもよ~!アスランのせいで俺は賭けに負けたようなもんなんだぜ。張本人に文句のひとつも言う資格くらい、あるんじゃねーの?」
「ディ・ディアッカっ!!」
会話の意味は不明だし、極めてどうでもよいことであったのだが、聞き逃せない一言が引っ掛かった。
「――――賭け、とは?」
「んあ?そうだよ。パーティが終わったら、お前がすぐに帰るかどうか、ニコルと賭けてたんだ」
「そうか。それは面白そうだな」
射殺すような冷たい視線が、悪怯れることなく答えたディアッカから自分に移るのを見て、流石のニコルも首を竦めた。
賭けとやらの発案者はニコルに違いない。如何にも考え付きそうなことだとアスランは眉間の皺を深くした。比較的良識の持ち主とはいえ、ニコルも所詮は“類友”なのである。
分かっているアスランも敢えて咎め立てたりはしないが(馬耳東風とはこのことだ)、それで怒りが緩和されるわけではない。寧ろ蓄積されてピークに達していた。
怒りのバロメーターが振り切れそうな空気を察したニコルは反論もあればこそ、口を噤むしか手立てはなかったが、そんなスキルは元から放棄しているディアッカである。
「俺はてっきりあのカガリとかいうお嬢様を美味しくいただくんだと思ってたのによ~。ひょっとして不能か?」
相談にのるぜ!と言わんばかりに胸を張るディアッカに、何を言っても無駄だと、アスランは諦めと共に無理矢理怒りの矛先を収め、話題を別の方向へ逸らすことにした。ディアッカが狙ったわけではないのだろうが、こういう対処の方法もあるのかと、ニコルが密かに感心したのは当然内緒である。

「…―――そういえばイザークの姿が見当たらないが」




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