策士




力一杯こんな言い訳をする行為自体がカガリの嫌味を肯定することになるのだが、勿論キラがそれに気付くことはない。そもそもキラに避けられようが嫌われようが、カガリにとっては痛くも痒くもない些末なものでしかなかった。
『別にどーだっていいけどな。ま、そういう事にしといてやるよ』
なんでそんなに上から目線なんだ。大体どうだっていいなら言わなければいいじゃないか、という悪態は寸でのところで飲み込んだ。
キラだって長く話したい相手ではないのだ。
「それで、一体僕に何の用?」
かつてカガリがもたらした情報に良いものなどあった試しはないが、用がなければかけてすらこないはずだ。それを聞かないことには電話を終われない。第一キラの携帯にはキャッチホンなど付いてないのだから、この瞬間にアスランから連絡が来たら出られないではないか。
焦るあまりの素っ気なさを、いつもの他人行儀と受け取ったカガリは、あからさまに笑いを滲ませた声で唐突に言い放った。
『お前、明日の夜は絶対空けておけよ!んで、屋敷へ来い!』

「――――は?」


カガリは命令することに慣れている。この言い草もその一環だと理解は出来るが、キラがこの国の最高学府に通っていて成績も上位をキープするために時間を惜しんで勉強していることや、少しでも生活費の足しになるよう単発のバイトで忙しくしていることを知らないわけでもないだろう。数日先の約束ならばスケジュール調整も可能だが、今日の明日で“空けておけ”などと人を振り回すのもいい加減にしろと苛立ちが先に立つ。


だが、ウズミやカガリの“命令”はいつだってキラに対して、絶大な威力を発揮するのだ。




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