策士




だがキラは知らないことだったが、このカガリの様子に顔を顰めた者は少なからずいた。ザラ家側の招待客がそれで、中でもアスランの連れである例の三人組などはその最たる者だった。彼らは申し合わせたように視線を見交わし、一様に苦虫を噛み潰したような顔をして、再び前へ向いたのだった。やはり歴史ばかりの家柄とは合いそうにないと、それぞれが胸中で再認識したのはいうまでもない。

そんな一部のやや白けた空気に気付いているのかいないのか、ウズミがまた口を開いた。
「不肖の娘、カガリ・ユラ・アスハには勿体ない将来の伴侶を得ることが出来て幸いに思うと同時に、父親として心からの賛辞を贈りたい。ではご紹介致しましょう。アスラン・ザラくんです!」
今度こそ広間は大きな歓声に包まれた。予想はしていたキラも、怒濤のごとく鳴り響く拍手と喝采に飲まれ、頭がクラリと酩酊を訴えた。そんな覚束ない視界であっても、紹介を受け、前へと進み出たアスランを捉えられないわけがない。


思えば初めて会ってからずっとそうだった。
心底大嫌いだと思っていた時でさえ、その姿には否応なしに惹き付けられていたのだ。理屈や感情ではなく、もっと本能的な何かに突き動かされるように。
神様の存在を信じているわけではなく、まして不遇な身の上からか運命などという言葉も余り好きではないキラでも、それが一番しっくりくると思うのだ。
アスランに出逢えたことこそ“神様の思し召し”というやつで、好きになってしまったのは、生まれる前から決まっていた“運命”だったのではないのかと。




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