策士




◇◇◇◇


「へー、さっすがアスハ!俺らん家みたいなパッと出なんかとは一味も二味も違うってか?」
今にも口笛でも吹かんばかりの絵に描いたような軽薄さの友人に、優しげな外見の割に口を開けば毒舌家の少年が眉を寄せた。
「ちょっと!行儀悪いですよ、ディアッカ!」
が、今日ばかりは十八番の嫌味も若干鳴りを潜めている所為か、慣れたディアッカには全くダメージを与えられなかった。ヘラヘラとした笑いは治まることなく、それどころか一層酷くなる始末だ。
「なんだよ~、ニコルだって同じこと考えてたくせに」
揶揄かうような反撃に加え、横合いから肘で突かれたニコルと呼ばれたその少年は、グッと言葉に詰まってしまった。ディアッカの指摘は図星真ん中ストライクだったのだ。彼らの仲間内では比較的一般常識に近いところにいるニコルだが、ディアッカの方が僅かに年長者だからだろうか、時折こうした詰めの甘さを露呈してしまう。
「そ・そりゃ、僕だって所謂“名門”の屋敷に来るのは初めてですし――」
本当は親が招待されたというのに「友人の婚約を祝いたい」という理由をこじつけてまでわざわざ付いて来たのは、半分以上野次馬根性が働いた結果である。正直に認めたニコルをディアッカもそれ以上揶揄かおうとはしなかった。所詮は同じ穴のムジナなのだ。ディアッカの場合は100%野次馬根性であるが。
「やっぱアスランってすげーよな。ツルんでても俺たちとはどっか違う奴だってのは分かってたけどよ。まさかほんとにアスハを射止めちまうなんてな」
「それも何時の間にやらお相手はカガリ嬢に変わってるじゃないですか。確か弟さんの方でしたよね、アスランの許婚者って」
「あ~、それも作戦だったんじゃねーの?まずは弟とお近付きになっといて、徐々にアスハ家に食い込んで行くっていう手段。全然興味ありませんてな涼しい顔しといて、一番いいところを持ってく辺り、いかにもあいつらしいじゃないか」




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