策士




「何度も申し上げたはずです。それとも音に聞こえたパトリック・ザラも耄碌したということでしょうか。年齢には勝てませんものね。ならばもう一度言います。俺に許婚者を代える意志はない」
「お前の意志など関係ないことだと、最初から言っている!」
「何故ですか?キラの何処がいけないと?彼だってアスハの血を引いてるではありませんか」
「だがあの弟はあくまで“妾腹”だ。引き換えカガリ嬢ならば誰もが認めるアスハの跡取り娘ではないか!その“誰もが認める”ということの重要性が分からんお前ではないだろう!ザラ家に足りないものがあるとすれば、それは高貴な血筋に他ならん!どこの馬の骨が産んだのかも分からない、弟の、しかも男など、比べるまでもないわ!!」
「今更血筋の正当さをとやかく言われても仕方ありませんが、父上がザラ家の更なる発展をご希望なら、叶えてお見せ致します。キラとならその自信がある。それこそカガリ嬢を娶る何倍もの成果をね」
「大層な御託を並べおって。カガリ嬢にしておけば、いらぬ苦労はせんでもいいという親心が分からんのか?」
「女の力で認められても嬉しくもありません。父上こそ俺の気持ちが分からないはずはないでしょうに」
ふと、そこでパトリックの表情が変わった。見越しての発言だっただけに、アスランも別段驚きはしない。
しかし敵もさるもの、見せた表情を一瞬で掻き消し、お得意のシニカルな笑みを取り戻した。




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