告白




けれどアスランは頑なだった。
「いいから着てろ。俺よりもお前の方が寒そうだ」
「…―――ありがと」
これ以上強がって突っぱねるには気温が低過ぎて、キラは有難く申し出を受けた。が、早速羽織った途端、今度はなんとなしに微妙な気分にさせられる。
「…なんだ?」
キラの見上げてくる不穏当な視線にアスランは眉を寄せたが、「別に」とそっけなく応えるしかなかった。気付かれないように袖の中でぎゅっと拳を固める。
そう。アスランのダウンジャケットはキラには大き過ぎて、すっぽりと指先までが隠れてしまったのだ。体格差があるのは分かっていたが、こうもハッキリ突き付けられると同じ男として流石に居たたまれない気分になる。
そこの所を追求されたら非常に気分が悪いので、不自然だとは思ったが、渋々ながら話題を戻すことにした。
他に何を話していいのか思い付かなかったのだからしょうがない。

「それよりいい加減教えてよ。何処なの?ここ」
漸くキラの質問に答えたアスランの口元が薄く笑っていた気もするが、この際綺麗にスルーさせて頂いた。
彼の口から出たのは全く聞いたことのない地名だったが、それ故に遠くへ連れて来られたのだと察するには充分だった。
「なんで、こんな所に?」
地名が判明しても、結局何一つ解決していない。寧ろどうしてアスランがこんな場所へ自分を連れて来たのかの方が重要だし、それを教えてもらわないことにはまるで無意味だ。
「こっちだ」
ところがアスランはやっぱりそれに答えてはくれず、キラに背を向けるとサッサと何処かへ向けて歩き始めてしまった。

暗闇にひとり取り残されるのが好きではないキラは、諦念の溜息を吐き、やはりアスランに付いていくしかなかった。




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