告白




◇◇◇◇


漸く暗い窓の外に微かに風景を窺い知ることが出来るようにはなったが、今居る場所が予想以上の田舎と知って息を飲んだ。一方のアスランは相変わらず黙々と更に車を走らせるのみだ。
(…―――山?って嘘でしょ)
やがて行く手に黒々とした大きなシルエットが見え始め、それが連なる山であることをキラに教える。田舎の割りに道路整備は行き届いているようだから、ひょっとしたら金持ち連中のちょっとしたリゾート地なのかもしれない。

果たして山の中腹には拓けた場所があって、いかんせんこう暗くてはハッキリと視認は不可能だが、数ヶ所に点在している巨大な建物が、その佇まいからリゾートホテルのようだと予測出来た。




「降りろ」
アスランはキラに短く告げると、スルリと運転席から外へ出てしまった。途中適当に車を走らせているのだろうかと思いもしたが、そうではなくちゃんと目的地へ向かっていたらしい。
一人車内に残っていても仕方ないからとドアを開けたキラは、途端に襲って来た刺すような冷気に身体を竦ませた。車内は暖房が効いていたから、温度差で余計に厳しく感じるのだろう。それでなくてもこういう山間部は気温が低い。その上まさかの展開だったから、キラの服装は冬とはいえ比較的軽装だった。
しかもキラは寒さが苦手だ。冷え性というと女性のようで抵抗があるが、要するに一度冷えると中々温まらないという意味では同じである。

「これ、羽織っとけ」
風邪でもひいたらどうしてくれる、と内心で悪態を吐きながらも立ち上がろうとした直前、目の前に突き付けられたのは黒のダウンジャケットだった。言わずもがな、アスランのものだ。
「え?いいよ。アスランが寒いじゃない」
アスランは車内にいたままの格好である。元々厚手のジャケットは羽織っていたが、こんな山奥に対応出来る服装でないのは明らかだった。




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