告白




(どうしてこんなことになっちゃうんだろう)
会話の無くなった車内で、泣いた為にぼんやりしてしまった頭で考える。そもそも自分は人畜無害な仮面を被って表面上だけ他人と上手くやるなんて、お手のものだったはずではないか。それがアスラン相手の時に限って全く上手くいったためしがない。

お互い反発し合って。こんな奴と婚約なんで冗談じゃないと本気で思ったものだ。

それなのにいつの間にか欲しくなっていた。心を全て明け渡しても、この男なら受けとめてくれるのではないかと。
馬鹿みたいに信じてしまった。信じたかった。

少なくともキラはそうだったのに。


(そんな奇跡みたいなこと、起こるわけないのにね)
他の人間は知らない。でもそんな神がかり的なご都合主義、自分には絶対に降ってこない。それを分かっていたから期待して肩透かしを食らうのが怖くて、心に鎧を着けていたはずなのに。

案の定ものの見事に淡い期待は打ち砕かれて、結局みっともなく泣くはめに陥った。いるのかどうかも疑わしい運命の神とやらが「それみたことか」と嘲笑している気さえする。なのに頼みのアスランとはまともな喧嘩すら成立しないなんて。つくづく相性の悪さを思い知らされるというものだ。
その事実すら小さな棘となって容赦なく胸を刺す。唯一欲しいと思った男が相性最悪の相手だなんて、冗談でも笑えない。


これからどうしようか、とキラは思考を切り替えた。
楽になる方法なら知っている。さっさとウズミとカガリに前言を撤回し、アスランのことなど忘れてこれまで通り生活していけばいいのだ。どうせキラの小さな意地を貫いたところで、アスランが変わるとは到底思えない。同じ想いを返してくれないならば辛いだけだ。

それなのに――――


どうしてもこの想いを棄てられそうにないのが歯痒い。




車内は重苦しい沈黙を漂わせたまま、やがて車は出口から高速を降り、一般道を走り始めた。




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