(でも今でも女の人と遊んだりしてるのか、訊くくらいは許されてもいい‥よね)

結局はどうやってアスランに話を振るか、という当初の問題が残っただけで、キラは頭を掻き毟りたくなった。
(えーい!もう!!女々しいんだよ!)
こんなのは自分らしくない!とブンブンと頭を振ったところで、突然不快な電子音が鳴り響いて、やや大袈裟に驚いてしまった。
しかも音の発信源はどうやらキラの鞄の中のようで、更に慌てた。

「あっ!すいません」
意識的にそうしているとはいえ、お世辞にも交友関係が広いとはいえないキラの携帯は、普段からあまり鳴ることはない。だからうっかりマナーモードにするのを忘れていたのだ。
キラはそう嫌いではないが、老齢の教授は気難しいと評判だ。それでなくても目上の相手の前で着信音を鳴らしてしまうなんて、余りにも不調法で、キラが恐縮する理由には充分だった
だが当の教授の気には然程障らなかったようで、トレードマークの眉間に皺は健在だったものの、比較的柔らかな口調で言ってくれた。
「ああ、構わんよ。実験のキリもいいことだし、そろそろ昼だ。食事でもして来なさい」

最近の学生は授業中でもメールを打つことなど当たり前。流石に通話することこそないものの、鳴り響く着信音に授業を中断させられることもしばしばなのだ。
今は授業中というわけでもない。確かに些少だがバイト料を払っているからバイト中といえなくもないが、あの程度の金額で優秀な助手が得られるのなら利点はどう見繕っても教授の方が多いといえる。

ペコリと頭を下げてキラは教授の提案を有難く受けることにして、携帯を突っ込んである鞄を掴んで研究室を出た。



比較的新しい近代的な造りの廊下を歩きながら、キラは早々に携帯を取り出した。かつて数えるほどしかないがウズミから連絡が来る時は全て電話だったから、着信音がメールだった時点で、彼である可能性は頭から排除していた。

ではカガリだろうか。


一方的に“アスランを譲らない宣言”をしたまま別れてしまったから、その可能性は極めて高いが、出来れば違っていて欲しい。

では残る心当たりはと、指を震わせながら、新着メールを開くと。



「…―――アスラン」




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