“自分でちゃんと確かめる”


カガリからアスランが他の女の人と会っているという話を聞かされた日、キラは決意したつもりだった。しかし時間が経ってみると段々と腰が引けてきているのもまた事実なのだ。
大体どうやって問い詰めていいのかすら分からない。「女と会っていたと聞いたがどういうことだ」なんてダイレクトな台詞で詰問するなど、キラにはハードルが高過ぎる気がした。

そもそも何もかもが上手くいって、自分と彼が結ばれることになったとしても、アスランが“愛人”という形で他に女性を囲うのは確定事項なのである。彼に対する想いも今とは違っていたとはいえ、“愛人”については、かつての自分も了承済みだ。男の自分が子供を産めない以上、仕方のないことなのだと頭では分かってもいる。

勿論今のキラにとってそれは正直辛い事情だ。アスランには全部で自分に向かって欲しいと思うし、その全てを受け止めたいと思う。
それなのに今回キラやカガリが邪推している通りに、アスランが“女遊び”をしていたとしても、自分には咎める資格もないなんて虚し過ぎる。

女性であるカガリはともかくとして。



(あーあ…)

キラの唇から盛大な溜息が洩れた。
机に行儀悪く頬杖をついて、背中を丸めてうなだれる。


そんな自分でも独占欲は一人前にあるらしく、アスランが他の女とベッドを共にしたなんて考えるだけで深い場所からドス黒いものが沸き上がった。
誰を誤魔化せても自分は騙せない。

この思いの正体は紛れもない“嫉妬”で、そんな醜い感情を抱く自分が酷く汚いもののように感じた。




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