「どういうこともなにも。まさか俺を手に入れたとでも思ってたのか?だったらとんだ勘違いだな」
「だって今までは――」
「確かに俺も来るもの拒まずで遊んでた。それは認めるし悪いと思っている。だからこうやって付き合ってやったろう?だが“遊び”のデートならこれで充分だ」
「そ・そんな!」
相変らず背中を向けたまま、アスランは深く嘆息した。馬鹿を相手にするのは本当に疲れる。
「納得はいかないだろうが、デートがとんな内容だったのかは、お前と俺が喋りさえしなければ、他からは分からないことだ。二人で出掛けたことは紛れもない事実だし、お前だって最初から“俺と付き合った”という優越感が欲しいだけなんだろ?俺なんかのどこがいいのか皆目見当もつかないが、俺の気を引いたってだけで、結構なステータスになるみたいじゃないか、お前たちの間じゃ」
「!!」
息をのんで絶句されて更に気持ちが冷めてくる。図星だったのだろう。
せめてもう少し上手く誤魔化せないものだろうか。

こちらとて期待していたわけではないが、やはりつまらない時間だった。金を湯水のように使わされただけだ。まぁ金はどうせ腐るほどあるのだから構わないが。
父の金など汚いことに手を染めたものが大半を占めるのだから、少々世間に還元するくらいの方がいいに決まっている。



無論、キラと逢う時は例外だった。

そもそもキラはアスランに余り金を使わせてはくれない。男同士だから気持ちも分からないでもないが、余程のこじつけでも用意しないと、一方的に奢られるのを潔よしとしないのだ。




店の外に出たアスランは、冷たい夜風に上着の襟元を掻き寄せた。支払いの時に抜かりなく家の車も呼んでおいたから、程なく現れたそれに早々に乗り込む。

店内に残してきた女のことになど、もう一片の興味もなかった。




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