涙
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暇を持て余しているアスランと違い、キラが普段からアスバイトと勉強の両立にと忙しく過ごしているのは知っている。実の父親であるに関わらず距離を置いているウズミの金を受け取るのに抵抗があるのか、特にバイトには貪欲な姿勢を隠そうともしない。妾腹であることはアスランも知っていて、父親に頼りたくない事情もその辺りにあるのだろうが、実は彼の口から詳しく聞いたことはなかった。その内話してくれればいいかと思う程度だ。
キラを選んだ時点で、アスランにとってそんなアスハ家の事情は取るに足らないものに成り下がった。あれほど自分に宛行われたのが“二番目”だと落胆した自分が嘘のようだ。
しかしキラのそういった頑なな部分も決して嫌いではない。何故ならそんなキラがアスランの支払った服や食事を結果的に受け入れたという事実が、自分だけが彼の“内側”に入れてもらえたのだとも受け取れて、それはそれで悪くはない気分だったのだ。
取り敢えずは女を帰し、駄目もとで連絡を取ってみようと考えながら、女を待たせてあった個室へと戻ったアスランだったのだが。
「お生憎さま!他の女なんかお呼びじゃないのよ!」
語気も荒く連れの女が啖呵を切って携帯を切った、丁度その瞬間を目撃する羽目になった。
それだけなら気にかけることはなかったろう。しかしそういうわけには行かない事情があった。
女が手にし、今まさに捨て台詞と共に通話を切ったのは、他でもないアスランの携帯だったのである。
確か壁に掛けたジャケットの内ポケットに入れてあったはずのそれを、アスランは眉間を寄せて凝視した。
「…―――勝手に他人の携帯に出るとは、癖の悪い女だな」
「きゃっ!ア・アスラン!?」
まさかのタイミングで現れた携帯の持ち主に、女は悲鳴を上げてほんの一瞬だけバツが悪そうな顔を見せたものの、すぐに立ち直って鼻に掛かった猫なで声を出した。
「だぁってぇ。ずーっと鳴りっぱなしだったからぁ」
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暇を持て余しているアスランと違い、キラが普段からアスバイトと勉強の両立にと忙しく過ごしているのは知っている。実の父親であるに関わらず距離を置いているウズミの金を受け取るのに抵抗があるのか、特にバイトには貪欲な姿勢を隠そうともしない。妾腹であることはアスランも知っていて、父親に頼りたくない事情もその辺りにあるのだろうが、実は彼の口から詳しく聞いたことはなかった。その内話してくれればいいかと思う程度だ。
キラを選んだ時点で、アスランにとってそんなアスハ家の事情は取るに足らないものに成り下がった。あれほど自分に宛行われたのが“二番目”だと落胆した自分が嘘のようだ。
しかしキラのそういった頑なな部分も決して嫌いではない。何故ならそんなキラがアスランの支払った服や食事を結果的に受け入れたという事実が、自分だけが彼の“内側”に入れてもらえたのだとも受け取れて、それはそれで悪くはない気分だったのだ。
取り敢えずは女を帰し、駄目もとで連絡を取ってみようと考えながら、女を待たせてあった個室へと戻ったアスランだったのだが。
「お生憎さま!他の女なんかお呼びじゃないのよ!」
語気も荒く連れの女が啖呵を切って携帯を切った、丁度その瞬間を目撃する羽目になった。
それだけなら気にかけることはなかったろう。しかしそういうわけには行かない事情があった。
女が手にし、今まさに捨て台詞と共に通話を切ったのは、他でもないアスランの携帯だったのである。
確か壁に掛けたジャケットの内ポケットに入れてあったはずのそれを、アスランは眉間を寄せて凝視した。
「…―――勝手に他人の携帯に出るとは、癖の悪い女だな」
「きゃっ!ア・アスラン!?」
まさかのタイミングで現れた携帯の持ち主に、女は悲鳴を上げてほんの一瞬だけバツが悪そうな顔を見せたものの、すぐに立ち直って鼻に掛かった猫なで声を出した。
「だぁってぇ。ずーっと鳴りっぱなしだったからぁ」
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