とにかくそんな経緯から女に付き合っていた時間は、アスランの人生の中で一番時計を気にするものだった。退屈な時は中々進んではくれず、何度も何度も腕時計を見ては溜息を繰り返した。
食事を終えてそろそろ帰ってもおかしくない頃合いだと判断し、アスランはやっとの思いで席を立った。

付き合ってやっている間中、女の話題は仲間であるはずの別の女の悪口に終始していて、アスランにとっては比喩ではなく拷問のような時間だった。更に席を立ったのが支払いを済ますためだと分かっていても、女に遠慮する素振りはない。それは金を払わせるのは至極当然だと思っている証拠で、アスランも別に払って欲しいわけではなかったが、こういう何気ないことでさえキラとの違いが浮き彫りになって、逆に余計に彼を思い出させた。

これまでの悪業の罪滅ぼしのつもりで女を誘ってはみたが、どうしたことかあらゆる場面でキラと比較してばかりの自分がいた。

挙げ句その反動のせいか無性に彼に逢いたくなるなど、人間の心理とは本当に予測不可能なもののようだ。



(逢いたいなら逢えばいいのか)

自分は許婚者だ。毎日でも逢うことに誰に遠慮がいるものか。

そんな単純なことにさえ気付かなかった自分の“らしくなさ”に、内心で苦笑しながら、アスランは支払いを済ませたついでに、店員に女を追い返すための車の手配を頼むのを忘れない。



そして思考は自然にキラのことへと戻っていく。

素直でないことにかけては比類無きあのキラである。女を帰す算段が簡単についたようには、こちらの思い通りにはなってくれないだろう。普通に誘ってもきっと首を縦には振りはしないから、何に託けてあの石頭を呼び出してやるのが一番効果的かを熟慮する必要があった。




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