「何で――知って…」
反射的に訊いてしまってから、馬鹿なことを言ったと口を噤んだ。これでは女と会っていたのを認めてしまったも同然だからだ。が、それに気付かないキラでもないだろうに、まるで他人事のようにアスランの求めに応じ、淡々と経過を説明し始めた。
「カガリがね、きみの携帯に電話したとき、知らない女の人が出たって教えてくれたんだ。僕、丁度ウズミさまに会いにアスハ邸に居たから」
いや、怒られたっていうのが本当かな…などと呑気とも取れる呟 きが続く。
堪らずアスランは適当に目についたショッピングモールの大型駐車場へとハンドルを切った。これはどう考えても運転しながらする会話ではない。

「アスラン?」
こういう場所で買い物をするアスランの姿が想像出来なくて、キラが不思議そうに名を呼んだが、答えるつもりはなかった。



電話に勝手に出られたことなど、心当たりなんかひとつしかない。そのたった一度がこんな偶然に当たるなんて、一体誰が予測出来ただろう。


だからずっとキラの様子がおかしかったのだと合点がいく。
ウズミに逆らってしまったことですら、まるでどうでもいいことであるかのように話したのも、全てこの所為だったのだ。

アスランが女と会っていたことを知っていたから。



だがアスランの中で急速に沸き上がったのは、寧ろ苛立ちだった。
自分のしたことを棚に上げて、と詰られても文句は言えないが、そんな冷静な思考は早々に吹き飛んでいたし、そもそも不特定多数の女と過ごしたことなどアスランにとってはノーカウントでしかない。

従って追及するアスランの声は低く、責めているといっても過言ではなかった。
「………お前が‥カガリ嬢に教えたのか?」
「は?何を?」

「俺の携帯の番号だよ!」


ドンと音を立てて、アスランが力任せにハンドルを拳で打った。


キラの口調と内容がちぐはぐに感じてずっと顔を見ながら話したいと思っていたはずなのに、漸くそれが叶う今、皮肉なことに心が彼を視界に入れることを拒否していた。




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