おそらくウズミからのファーストコンタクトも悪い方へと転がったのだと思う。
アスランなら理解出来ないでもないが、ウズミほどの人間なら、母親を亡くしたばかりの傷心の息子の元といえど、まずは代理人を向かわせたはずだ。しかしごく普通の生活しか知らないキラからしてみれば、それは“冷たい人間”のすることにしか受け取れなかった。
極力ウズミの金を使わないように、これみよがしにアルバイトに精を出している姿が、その時のキラの絶望を証明している。

だがウズミが世間の評判に違わない“人格者”であることも事実だろう。僅かな会話しか交わしたことのないアスランでさえ、彼が悪い人間ではないと思うのだから、仮にも息子のキラならより複雑な心境であるのは想像に難くない。
おそらくは反発する心と尊敬との間で揺れ動いていて、キラ自身どうやって接すればいいのかを掴みかねているのが本当のところなのだ。


(いっそ嫌いになれれば楽なのにな)

しかしそう単純にいかないのが人間だ。特にキラは意識的に他者を遠ざけようとしているけれど、根本を探ればお人好に分類される。特定の人間以外を軽視する傾向にあるアスランとは本質的に違うから、そもそも同列に並べるには無理があった。
しかも縁のなかった父親の存在に対する“憧れ”も、キラの中には確かに存在しているから、更に厄介だ。

素直じゃなくてすぐ諦めたような顔をしたり、つい距離を置くような発言をしてしまうが、最終的にウズミの命令に対して逆らう選択肢など持ち合わせてないに違いない。

そのウズミの決定に逆らった事実を、キラが拍子抜けするほどアッサリと話したものだから、アスランにとってはちょっと、いや、かなり意外だった。


とはいえキラがウズミに話を通したと言うのなら、アスランも当事者の一人として、許婚者問題の首尾が気になるのは当たり前のことだろう。




13/20ページ
スキ