消去法でいけばカガリかアスランのどちらかで、確率は五分五分だった。
一部の友人もキラのアドレスを知ってはいるが、既に大学は冬期休暇に入っているし、年末年始にかけイベントごとが目白押しとくれば、キラにメールを送るような酔狂な友人は残念ながら他にはいないのだ。
それでも違っていて欲しかったな、と落胆してしまった自分の往生際の悪さに自嘲が零れる。

溜息と共に開いたメールの件名は無く、本文も『連絡をくれ』という実にそっけないものだった。いきなり電話をかけてこないのは、バイトに勤しんでいるだろうキラへの配慮に他ならない。教授の手伝いもバイトにカウントしているキラだから、その意味では間違ってはいないのだが。

携帯画面を開いたまま、キラは暫く立ち止まって逡巡した。送信した直後の今なら、まだ携帯はアスランの手元にあるだろうと思われたからだ。掛け直すなら今だろう。
会って話したいと思っていたくせに、どうせこのままではいつまで経っても踏ん切りなんか付きそうにない。さらに情けないことに、今を逃せばまたうじうじと迷うのは目に見えている。

電話を掛けるなら今しかないと、半ばヤケクソ気味に決意すると、キラは建物の外へと足を向けたのだった。




大学のキャンパスは広い。校舎と校舎の間にある庭には、ちょっとした公園のように芝生と木陰になるような木々が植えられていて、所々ベンチも設置されている。気候がいい時期ならば学生たちの憩いの場と化すそこも、寒い冬では教室移動する姿をチラホラ見掛ける程度。しかも冬期休暇中となれば、人影は疎らどころかまるで見当たらなかった。人目のない所を探そうとしていたキラにとってはまさしく好都合だ。
建物と建物の狭間になるため、風の通り道ともいえる凍えそうなベンチを適当に選ぶと、キラは気温の所為だけでないみっともなく震える指で、携帯を操作したのだった。




10/20ページ
スキ